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ウォンカとチョコレート工場のはじまりのkuuのレビュー・感想・評価

4.0
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』
原題 Wonka
製作年 2023年。上映時間 109分。
ロアルド・ダールによる名作児童小説『チョコレート工場の秘密』に登場した工場長ウィリー・ウォンカの始まりの物語を描くファンタジーアドベンチャー。
若き日のウィリー・ウォンカをティモシー・シャラメが演じた。
名優ヒュー・グラントがウンパルンパを演じ、サリー・ホーキンスやオリビア・コールマン、ローワン・アトキンソンら演技派俳優が共演。
監督はポール・キング、製作はデビッド・ハイマン。
脚本・製作・監督は『パディントン』と同じチームやそうで、どうりでキャストもパディントンOBが多いこと。

純粋な心ときらめくイマジネーションを持ち、人びとを幸せにする『魔法のチョコレート』を作り出すチョコ職人のウィリー・ウォンカは、亡き母と約束した世界一のチョコレート店を開くという夢をかなえるため、一流のチョコ職人が集まるチョコレートの町へやってくる。
ウォンカのチョコレートはまたたく間に評判となるが、町を牛耳る『チョコレート組合』からは、その才能を妬まれ目をつけられてしまう。
さらに、とある因縁からウォンカを付け狙うウンパルンパというオレンジ色の小さな紳士も現れ、事態はますます面倒なことに。
それでもウォンカは、町にチョコレート店を開くため奮闘する。

ロアルド・ダールが1964年に発表した小説『チャーリーとチョコレート工場』の前日譚。
この本はすでに多くの映画化を生み出している。
ティム・バートン監督によるジョニー・デップ主演の2005年版、メル・スチュアート監督によるジーン・ワイルダー主演の1971年版などなど。
ポール・キング監督の今作品をどれかを比較するのは不公平かな。
キング監督が築き上げた物語は、良くも悪くもこの映画独自のものではあるけど、これらの映画に敬意を払って構築されているんは間違いない。
ブリット・シネマの新喜劇王である脚本家サイモン・ファーナビーと脚本・監督のポール・キング(彼らはすでに『パディントン』で小生を魔法をかけている)の手にかかれば、この『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は甘くて絶対的なご馳走となりました。
ティモシー・シャラメは、母親(サリー・ホーキンス)が発明したチョコレートのレシピで財を成そうと決意し、波打ち際での古風な生活を経て戦前のパリにやってきた青年ウォンカを魅力的に演じています。
彼はチョコレートの破壊者(と云っても此処での破壊者は既存の方法や概念を覆すような、少し荒手に改革をもたらす存在)であり、新しいチョコレートのアイデアで停滞したチョコレート・ビジネスに揺さぶりをかける。
彼は残酷な仕打ちや投獄に直面するが、新しい友人たちの助けを借りて勝ち抜く。
シャラメは妖精のようで、無邪気。
パディントンのような無邪気さと魅力を持っている。
ちなみに、このとても華奢な人物は、自分ではあまりチョコレートを食べない。
彼はカカオにまつわる運命をヒロイズムで追い求め、ついには悪党たちのチョコレートで死ねという恐ろしい脅しに立ち向かう。
ファーナビーとキングは次に何をするつもりなのだろう?
ヒュー・グラントはもちろん、チョコレートの炎の番人であるオリジナルのウンパ・ルンパ役で、デジタル技術で高さ12インチに縮小された彼は、高慢で権利意識が強く、一種の部族音楽的な表現で自分自身を説明する。
オリヴィア・コールマンとトム・デイヴィスは、ウォンカを抑圧するスウィーニー・トッド風の激しいカップルを演じている。
ウォンカの素晴らしい新しい創造物に憤慨する不気味なチョコレートの支配者、ボギス=バンス=アンド=ビーン型のトリオを演じるマット・ルーカス、パターソン・ジョセフ、マシュー・ベイントンもよかった。
ローワン・アトキンソンは不可解な神父のキャリア・ギャラリーに加え、キャラー・レーンはウィリーの友人ヌードル役で大活躍。
ジム・カーターはウォンカの賢明な味方で法医学会計士のそろばんクランチ役で甘く魅惑的、キーガン=マイケル・キーはチョコレート中毒の警察署長役で大爆笑を誘い、フィル・ワンはシャラメとダンスナンバーを踊る。
しかし、成長したウォンカについてはどうだろう?
チョコレートバーに海塩を入れたのはなぜか?  貪欲で野獣のように甘えん坊な子供たちをひどい運命で罰することに満足する、残酷さを持つ、やや曖昧で不吉ですらある大人の人物に変貌させるために、若い頃の彼に何が起こったのか?
(実際のところ、ウォンカはダールのもう一人の作品、彼が脚本家を務めた『チキ・チキ・バン・バン』のキャンディを振り回すチャイルド・キャッチャーからそれほど離れてはいない)。
さて、今作品はその疑問に答えず、まるで存在しないかのように振る舞っている。
ウォンカは本当にいい人なのだなぁ。
おそらくファナビーとキングは『ウォンカ2』を作るに違いない。
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