ぼのご

夜叉ヶ池 4Kデジタルリマスター版のぼのごのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

休暇を使い夜叉ヶ池の伝承を調べにとある村までやって来て、厄介ごとに巻き込まれる山澤。こういう風に何処かに行って非日常体験をするお話って、遠くに行って普段の自分や日常を消し去りたい欲求を少し叶えてくれるようで好き。

水不足で苛立つ村人たち。山澤がやって来て、目に入ったゴミを取りたいからと水を欲しがっただけで怒り出すけど、人の良さそうな女性が母乳でゴミを取ってあげようとする場面がおかしかった笑 その時の山澤の慌て具合も可愛い笑

それから偶然辿り着いた家の縁側で、百合って名前の謎めいた女性とお話しているうちに、家の中に数年前失踪した友人の萩原の気配を感じた山澤。なにか事情を感じて、ズカズカ踏み込むのではなく少し声を大きくして、家の中の人物に聞かせるように話すこころ配りが素敵。再会した後も、事情を聞くにあたって「聞いてもいいのかな?」って、はにかみながら言うの可愛かった。
萩原にしても最初こそ山澤の前に出て行くのを躊躇ったけど、山澤が帰ってからすぐ雨が降って来て心配して駆け出す流れが熱い。こういう思いやりに満ちた関係いいな。

途中、当たり前のように唐突に妖怪たちが出てきてびっくり。たしかにそれまではけっこう怪しい雰囲気で、音楽も何かゾッとするような荘厳というのかよくわかんないけど、幽霊とかが出てきてもおかしくはない怖さあったんだけど。
でも妖怪たちが意外に賑やかで、音楽も急に楽しい感じになって、妖怪が出ている時の方が寧ろ明るい雰囲気になるっていうちぐはぐ感が面白かった。でも後の展開観ていると、人間たちの方が実際ホラーで、この演出もなんか納得いく。

萩原は百合と結婚していて仲良くやって居たんだけど、百合を雨乞いの生贄に差し出せと村人たちが詰め掛ける。大衆の愚かさも生贄を提案した村の有力者の醜悪さも耐えられないものがあって、萩原のド直球、渾身の「死ね!」は感情移入100%だった。

自分たちが助かりたいからって誰かに犠牲を強いるようなコミュニティなら、そんなコミュニティは消滅した方が良いって瞬間的に思ってしまった。絶望した百合が自害して、萩原も後を追って、祟りみたいのが起こって山澤以外の全員が夜叉ヶ池の水に流されるんだけど、大勢の自分勝手な考えの結果誰も得をしていなくて虚しかった。一人残されてうなだれる山澤が可哀想だった。序盤に母乳で山澤の目のゴミを取ろうとしてくれた女性もきっと死んじゃったんだろうから悲しい。赤ちゃんもいたんだろうに……。
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