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王手のsymaxのレビュー・感想・評価

王手(1991年製作の映画)
3.6
「どついたるねん」に続く、阪本順治監督の新世界三部作の第2作(3作目は「ビリケン」になります。)

阪本順治作品の中で一番好きな作品で、阪本監督の最高傑作と勝手に思ってます。

真剣=賭け将棋で金を稼ぐ"通天閣の真剣師"飛田歩が、プロアマ戦で勝ち進み、名人と対局する話で、コレが出てくる人出てくる人めっぽう面白い。

主役の赤井英和は、「どついたるねん」では、本人の自伝的な内容であったこともあり、役者というよりもボクサーとしてのベクトルが大きいような気がしましたが、本作で、役者赤井英和が確立したと思います。

決して器用に演じている訳ではなく、むしろ、大根役者と言えるかもしれませんが、彼だけにしか出せない色気というか、間というものが存在するように感じました。

何より凄いのは、赤井英和のその目です。
剃刀のように、鋭く輝く眼光は、ボクサーとしていくつもの修羅場を潜り抜けてきたからこそなのかもしれません。

"浪速のロッキー"と呼ばれ、後一歩のところまで迫った世界チャンピオンのベルト…大和田正春との運命の試合…ボクサーの頃からファンでしたが、俳優として売れていく程に、目の輝きが無くなっていくようで…今は、引越し屋のおっちゃんのイメージが強いですが、今作の飛田のような演技をまた見せて欲しいと思います。

今作のもう1人の主役は、これが遺作となった若山富三郎、"伝説の真剣師"三田村のジィさんを演じています。

これがもう…見て貰えば分かりますが、"凄まじい"の一言、タバコの吸い方、駒の動かし方、台詞回し、何もかもが完璧です。
画面に出るだけで、空気が変わるのが分かりますから…

名人戦を控えた飛田に、とんでもない将棋で鍛え
全てを教えた後、何かを悟ったように消えます。

唐突なシーンですが、若山富三郎の最後を暗示したかのような場面は、深く深く余韻を残します。

他にも、飛田と対局する真剣師として、シーザー武士(←いやぁ、良い味だしてます)や麿赤兒(←盲目の真剣師でこの対局は、爆笑です。)、プロ棋士として、伊武雅刀、坂東玉基等が出演してます。

加藤雅也は、今の感じは全く無いですが、将棋の虫を楽しそうに演じてます。

"新世界のドン"として金子信雄が短いながらも、ヒロポン打ちながら出てきたりして、本当、えらい贅沢です。

細かいギャグは、挙げたらキリがありません。

コメディとも言えますが、私は、将棋版"ロッキー"だと思っています。

そうそう、借金取役で、國村準が出ていますが、めっちゃ若いです。
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