カリカリ亭ガリガリ

ピノキオのカリカリ亭ガリガリのレビュー・感想・評価

ピノキオ(2022年製作の映画)
1.5
ゼメキスの怪作路線。は、嫌いじゃないので、あまり悪く言いたくも無いけれど、前作『魔女がいっぱい』の方がよっぽど露悪的で怪作だった気がする。あれは子供たちを魔女狩りに誘導するヤバイ映画だったので。

ゼメキス版『ピノキオ』は、プレジャーアイランドでようやく露悪趣味な本気が出てくる。ディズニーランド(ワールド)の意地悪なパロディは序の口で、あそこで大暴れする子供たちが、どう見たって暴徒と化した群衆でしかなく、悪口コーナーで敢えて文字を可視化させているのも、どう見たってSNSの揶揄なので、ああ、可愛いファンタジー映画が俗悪な現実に接近してきている!という瞬間は高揚した。映画が俗悪なベクトルに転換する時、さらに言えば、作家の(健全な)露悪性が画面から放出される時、ものすごく楽しくなる。だからプレジャーアイランドのシークエンスは面白く観たし、近頃の健全化しちゃったティム・バートンへの揶揄ですか?という気持ちすら抱いた。しかしながら、それが本作の評価へ相乗効果をもたらしているとは言えない。

ブルーフェアリーが黒人とか、プレジャーアイランドで飲むのがビールじゃなくてルートビアとか、クジラがシーシャークって謎のバケモノになってたりとか、昨今のディズニーが励むポリコレ配慮が(その改変自体に嫌悪感は全く無いけれど)、面白さとか作劇とかに全く無意味で、いくら何でもノイズすぎるので、だったら作らなくて良かったと思いますが……。

別に悪趣味な映画を見せろと言いたいわけじゃないけれど、こんな「健全で何も間違っていない映画」、俺は求めていましぇん……。