近本光司

狼をさがしての近本光司のレビュー・感想・評価

狼をさがして(2020年製作の映画)
3.0
1970年代の半ば、すでに日本人は学生闘争の挫折を経験し、深い絶望と当惑のなかにいたはずである。少なくともわたしはそのような認識でいた。だが1974年に、左翼思想をもつ日本人(本国人)たちが、植民地戦争の贖罪意識のもとで東アジア反日武装戦線を張り、日本の戦争責任を問い直すために関係企業の爆破などといった暴力行使をとったという事実に、まずもって驚きを禁じえなかった。おのれの信奉する主義主張を、法と秩序から逸脱することを承知の上で、武装闘争という手段で表明していくこと。それによって「いずれみんながわかってくれる」と無邪気に信じること。わたし(たち?)は、そのような認識を持ちえた時代とひどく隔たった場所にいる。