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パーフェクト・ケアのkuuのレビュー・感想・評価

パーフェクト・ケア(2020年製作の映画)
3.9
『パーフェクト・ケア』
原題 I Care a Lot.
映倫区分G.
製作年2020年。上映時間118分。
ロザムンド・パイクが主演したクライムサスペンスコメディ。
監督はJ・ブレイクソン。
共演にピーター・ディンクレイジ、エイザ・ゴンザレス。

法定後見人のマーラの仕事は、判断力の衰えた高齢者を守り、ケアすること。
多くの顧客を抱え、裁判所からの信頼も厚いマーラだが、実は裏で医師や介護施設と結託して高齢者たちから資産を搾り取るという、悪徳後見人だった。
パートナーのフランとともに順調にビジネスを進めるマーラだったが、新たに資産家の老女ジェニファーに狙いを定めたことから、歯車が狂い始める。身寄りのない孤独な老人だと思われたジェニファーの背後には、なぜかロシアンマフィアの存在があり、マーラは窮地に立たされるが。。。

日本において、6年後の2025年には、65歳以上の5人に1人、約700万人が認知症になると推測されている。
政府は、急増する認知症高齢者の生活を支え、財産を守る目的で2000年に成年後見制度をスタートさせた。
せや、同じ年に始まった介護保険制度の利用者が順調に増えとんのに(約488万人2017年)に対し、成年後見制度の利用者はいまだに約22万人と低迷している。
利用者が増えへんのは、制度の使いづらさや、悪徳が蔓延ることにある(裁判においては国選弁護人に選任されても仕事らしい仕事はしないし、せっせと、借金問題や薬害訴訟に首を突っ込みハイエナのように生き抜く弁護士は多々いる)。
たとえば、この制度をいったん利用すると、認知症高齢者本人が亡くなるまで利用を止めることができない。
それは後見人の7割以上を占める弁護士、司法書士などに、認知症高齢者が死ぬまで報酬を払い続けることを意味する。
この制度には、あまりにも多くの問題があり過ぎるなんて考えつつ観ました。

ロザムンド・パイクはどないな作品であろうと常に一生懸命さで、巧みな演技は、小生を強くとらえる。
今作品も同じ道をたどるのだろうと期待し、そして非常に楽しました。
まず、今作品の魅力は、脚本やと思います。
パイクたちの演技も巧みながら、ブレイクソンの脚本はイカれてて、知的にさえ感じました。
その前提が十分明確でなきゃ、資本主義が全体を通して重要なテーマとなる。
貧富の差ちゅう憂鬱な、せやけど現実的な比較から、この経済システムのいわゆるハイエナの冷酷な競争まで。
今作品は、現実世界との優れた並行性を見せつけてました。
このテーマに関する暗黙のメッセージのほとんどは、獅子奮迅の活躍を見せる主人公マーラ・グレイソンによって語られる。
資本主義の長所と短所、
そして合法的な不正の両方について狡猾な知識を持つマーラは、世界中の何百もの企業やCEOが、ほとんどの人が気づかないうちに行っているように、新しいターゲットを獲得して利益を得るまでの過程を、観てる側に、めちゃ魅力的な方法で一緒に体験させてくれる。
マーラがふさわしい競争相手を見つけると、ブレイクソンは地に足の着いたストーリーを危険にさらし、不条理でこの世のものとは思えないキャラとプロットの決定によって特徴づけ、ホンマイカれた後半に置き換える。
この目的が、一流の資本家の馬鹿げた、ほんで犯罪的野心を正確に示すことがなかったら、これは大きな問題やった。
ただ、いささかイカれ具合と不合理が過ぎるのは否めません。
文脈とブレイクソンの目的を考慮すりゃ、今作品はほぼ秀作と云えるかな。
しかも、エンタメ性は落ちないし、それどころか、そのイカれ具合を歓迎するくらいに急上昇している。
後半の緊張感とサスペンス、
ちょこっと予想外の展開。
そして衝撃的でありながら全く完璧なラスト。
業(カルマ)ってクソと思わせる。
被後見人を搾取する現実の後見人について、かなり啓蒙的な物語でした。
官僚主義の力、
過度に野心的な人々がしなければならへん道徳的な妥協。
ほんでもって、ある者にとっての利益は、他の者にとっての自由の欠如を意味することを見事に教えてくれる。
サウンドトラックは良い瞬間に適切な種類のトラックがながれたし、この音楽だけで、シーンの重要性を理解することができました。
また、なんて云ってもキャストの巧みな演技。
パイクの演技褒める必要はないやろけど。
しかし、他のキャストについては、ピーター・ディンクレイジは、ギャングをチョイ大げさに、せや興味深く解釈し演技を披露してくれてました。マーラの恋人フランを演じたエイザ・ゴンサレスもなかなかやったしパイクとの相性は抜群に感じた。
まばらながらインパクトのある感情的な場面は非常に説得力もあった。
ダイアン・ウィーストは、老婦人ジェニファー・ピーターソンを演じ、完全に悪女である。
最後に、注目を集める弁護士としてその魅力を発揮するクリス・メッシーナも巧い。
今作品は、啓発的な脚本を通じてそのアイデアを見事に展開してたし、現実の世界で時にずる賢い保護者と被保護者の関係に取り組んでる。
現実の資本主義への巧みな類推を盛り込んで、
権威の力、
過剰な野心、
他人の自由
を犠牲にして富と成功を得るために行う道徳的妥協について衝撃的なメッセージを発信していました。
ロザムンド・パイクは、新たな「犠牲者」を獲得して利益を得る過程をリアルに描いた作品としてスタートし、不条理な結果をもたらす全く狂気の後半へと発展する作品をホンマ巧く導いている。
この荒唐無稽な展開は少し非合理的になりすぎてたけど、競争に関する資本家の非道徳的な冷酷な行動を示すという目的は間違いなく達成されている。優れた演技と、驚くほど効果的な電子音楽が、より良いものにしてました。
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