ブラックユーモアホフマン

短篇集 さりゆくもののブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

短篇集 さりゆくもの(2020年製作の映画)
4.0
友人が良かったと言っていてずっと気になっていた。ようやく観られた。

『いつか忘れさられる』
35mm撮影。井川耕一郎監督『色道四十八手たからぶね』の残りフィルムで撮影されたと。撮影は芦澤明子さん。そして今回はフィルム上映。
そうか、カラーのサイレント映画があってもそりゃいいに決まってるよなと当たり前のことに気づかされた。

『八十八ケ所巡礼』
短編ドキュメンタリー。たまたま出会ったおじさんの八十八ケ所巡りについて回る。映像を通して死者と交信するような。それが一作の中で何層にもなっていてちょっとすごいかも、と思った。

『ノブ江の痣』
ジャンルが分からないまま見ていたら、めっちゃホラーだった。色んな監督の色んな作風のものが混ざっていて面白い。イカれた人しか出てこなくて愉快。特殊造形に気合い入ってた。終盤のあるシーンで「うわ、めっちゃ嫌!!笑」とちゃんと生理的嫌悪感を感じて、良かった。

『泥酔して死ぬる』
ヤバい。これはヤバい。一本目の35mmに対抗して?8mmで撮られた作品。
んーー何とも言い難いがとにかくヤバい。酒の飲み過ぎで倒れて断酒を試みる監督自身が出演しているがフィクションパートもありしかしそれが徹底した棒読み演技。ドキュメンタリー的なパートを挟みつつ、予想だにしなかったまさかのサイケデリックナンセンスエンディングに突入。
アル中映画の新たな傑作。

『もっとも小さな光』
2019年に逝去された櫻井拓也さん主演。ようやく出演作を観られた。唯一無二の存在感があり、主役から脇役まで何でも自分の役にしてしまいそうな見る者を惹きつける力がある。その後の活躍が見られなかったのが残念。
話自体は割と王道の人情話というか。主人公の彼の心境がどうして変化したのかがイマイチ分からなかったが、普通にいい話だった。