三國

偶然と想像の三國のレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
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シューマンの上品で軽快な旋律のなかに、とてつもなくドロドロした、臓器の塊のようなグロテスクそのものが浮かんでいた。ーー曰く「人間」。
と、そんな文句ももう使い古されている。
モダンもここまで来た。
でも相変わらずのようでもある。

正しいものなどない、というか誰にも正しさを押し付ける権利などない? ーー否々、押し付けを受け入れるも、逸らすも、それぞれが勝手気儘でそのままに正しく、しかし誰にも裏付けはとれない、ということ。合法則的な世界に比すれば人間の営みはいたってデタラメで、それでいて簡単で、だからこそ難しくて、笑ったり、泣いたり、解答用紙は見つかる当てもない。
故に、ただ、衝動。
手を握る。
抱きしめる。
たったそれだけの幸い。

己の体躯に重力を取り戻す。
三國

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