スワヒリ亭こゆう

ボーはおそれているのスワヒリ亭こゆうのネタバレレビュー・内容・結末

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

アリ・アスター監督の最新作です。
一見、不条理で意味不明な映画の様に思われるが、そう思わせて観客を篩にかけて理解できる人だけで楽しもうとする感覚。嫌いじゃないです。

本作を観ていると序盤で普通のリアルな世界観ではない事が容易に想像出来ます。
ボーの頭のフィルターを通して観ている世界なのかな?と思いながら観ていました。
確かにそれは間違いではないけど、ラストでボーのママが仕組んだ世界だったという『トゥルーマン・ショー』を思い出します。
ですが『トゥルーマン・ショー』の作られた世界と本作のボーのママ・モナが仕組んだ世界とでは違う狂気ですよね。どっちが怖いかは分からないかもしれないです🤔

本作の方が分かりやすい愛憎が存在している。
ボーの精神とモナの執着が加わる事で生まれる世界は予測不可能で不条理なんだけど、映画の語り方が素晴らしいので全く飽きないしずっと面白い。狂気の恐怖もあるんだけど、それも含めて面白い。
映像も素晴らしいデザインです。
ボーを演じたホアキン・フェニックスの演技も流石ですよね。この人の演技はオスカーよりも、もっと高い次元にあるので賞では計りきれない領域にいる現代最高の俳優の一人だと思います。
ホアキン・フェニックスが少しでも寒い演技をしたら台無しになりかねない映画です。
アリ・アスター監督の演出も素晴らしいのも想像出来ます。
高難度な世界観を共有した演者、スタッフの素晴らしさに感激しました。

この手の映画は全てを理解するのは難しくて、映画を観て感じた笑いや恐怖を受け止めた上でラストまで観ていくのが良いと思います。
ボーがママに感じているおそれ(恐れ、畏れ)とモナからの偏愛と執着。
それを踏まえて観ると更に面白くなりそうな気もするのでもう一度観たくなります。
素晴らしい映画作家が世界にはまだ沢山いる。それが一番嬉しく思いました。