Fitzcarraldo

こんにちは、私のお母さんのFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

こんにちは、私のお母さん(2021年製作の映画)
4.7
"Dune"も"Eternals"もワイスピも007も抜いて2021年の年間興行収入で約940億円を稼ぎ【世界最高の興行収入を獲得した女性監督】となったジア・リン主演・脚本・監督による自身の母との実話をもとにした逆バック・トゥ・ザ・フューチャー物語。

もともと2016年にキングオブコント的な番組で自身が発表したコントが原作。

YouTubeにそのコントがアップされていたので中国語も分からないままラストまで見たのだが、映画の骨格は既に出来上がっている。

多くの観客の前でコントを披露しているのだが、落語の人情噺のように終盤になると泣いてる観客が続出。優勝を懸けた争いなのだが、待機してる相手チームもモニターを見ながら泣いている。こんなに人の涙を誘うのは、誰にでも通じる普遍的なことを描いているからだろう。

このコントでも映画同様に若き母親を演じたのがチャン・シャオフェイだし、取り巻きの男連中も映画と同じキャスティングだと見受けられる。

一緒にコントを作った仲間たちを、そのまま映画でも使うジア・リンの愛情深さも感じる。

日本なら売れ線の俳優に配役が置き換わってしまうだろうからなぁ…そうでもしないと、誰も資金出さないだろうし。

自分が書いて自分が演じなきゃ駄目なんだという我を通したロッキースタイルが素晴らしい。

さらに若き母親を演じたチャン・シャオフェイを、ジア・リン自身が設立した芸能マネージメント会社に所属させる面倒見の良さもあって、単純にいいやつそうだなぁと…

その人柄の良さが役にもスクリーンにも遺憾なく反映されているし、彼女からは寅さんに通ずるような哀愁まで感じてしまう。

ツッコミどころは数あれど、登場人物を好意的に見れるようになったら、あとは軍門に下るだけ。

母娘の親子愛にだけ焦点を絞ったことも功を奏して、ハンカチがびしょびしょになるまで泣いてしまった。

何を言ってるかも分からないコントでさえも、ジア・リンの誘い泣きの涙に、もらい泣きしてしまった。

彼女の亡き母に対する純粋な想いが全身から伝播し、オマエの母への態度や行いはそれでいいのか?と強く訴えてくる。

ジア・リン
「世の中には間に合わない事がある。その最たるが親孝行である」

本作を通して観客に伝えたかったと語る。

それぞれ見てる人が、どの立場からどの目線で見るのかで印象は変わるのかもしれない。家族観や、親子関係なども影響されるだろう。

本作を私の母にもオススメしたのだが、いまいち刺さってなかった様子。母親目線だと印象は違うのか?

年甲斐もなく泣きすぎた私は恥ずかしくて、しばらく席から離れることができなかったのだが…。

前に座っていた若いカップルはケロっとして颯爽と帰っていくので、あれ?全然刺さってないやん…目腫れるくらい泣いてる自分がまた恥ずかしくなる。


ジア・リンと母親がチャリンコで2ケツしてて、事故に遭うのだが…カットが変わり後ろに乗っていた娘が全くの無傷なので、おいおいキミはサイヤ人かなにかか?母娘で圧倒的な戦闘能力の差があるじゃないの!と…ここで冷めてしまう人も確かにいるかもしれない。

バレーボールのボールが、嘘だろ?と思うくらいにやたらと安いCGとか…

要所でツッコミどころはままあるのだが…なぜか許せてしまうというか、そこまで気にならない。それもこれも全て母のために徹しているのだし、その衝動によって彼女は突き動かされているのだから、その点に集中してたら、ツッコミどころは気にならなくなる。

みうらじゅん著の『親孝行プレイ』も合わせて読むと、「恥ずかしがらないで♪ムーミンでいこうぜムーミンで」という『ひとつ屋根の下』の兄チャンの台詞をふと思い出す。
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