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歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡のYouKeyのレビュー・感想・評価

5.0
 岩波ホール閉館の日、最終回に観賞。岩波ホールと歌舞伎町の映画館街と中央線と山手線沿いの『二番館』で育ってきた私にとって、年明けにもたらされた岩波ホール閉館の報は、自分がこれから映画館へ行く理由が皆無になってしまう『軽薄短小』な時代にいよいよ拍車がかかるのか、映像表現の奥に何かを読み取ろろうとせず、いや、それ以前にネットとSNSだけが全て正しいと信じて疑わぬ『映画好き』が氾濫するのかと想像すると物悲しさを感じさせた。

 小学生の頃から両親、特に母に連れられ岩波ホールで映画観賞したことにより、ハリウッド大作だけでなくアジア、欧州、中東、ありとあらゆる国々の作品へ触れることによって『世界はアメリカだけでない』と学んだし、大人たちの中で映画を観る際の立ち居振る舞いも身につけた。

 ブルース・チャトウィンのように『歩いて』日本だけでなくフェイクでない世界を見続けたい。閉館には地味な作品だとは思ったものの、支配人が開映前のスピーチでおっしゃっていた通り、映画だけでなく書物や絵画(いわゆる『アート』)という文化を自身の眼で確かめることの重要さを訴える内容で、クロージングに相応しい作品だった。

 岩波ホール、ありがとうございました。また、いつかどこかで。
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