リプリー

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のリプリーのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
4.3
僕は幼稚園のときからアニメ・ゲゲゲの鬼太郎のファンで、まあ筋金入りと言っていいと思う。もちろん年齢により卒業していた時期はあるので、そんな偉そうな言い方は止すにしても、鬼太郎が僕の今の人格を形成する上で欠かせない要素であることは紛れもない事実だ。

そんな僕からして6期に対しては色々思うことがあり、それはキチンと整理したいなと思っているが、ザックリ言うとアニメ・ゲゲゲの鬼太郎としてヒロイックな鬼太郎を描くことに逃げているということに尽きると思う。
そして本映画の企画を聞いたときも「またか…」と思った。
大人向けアニメとして、水木しげる先生の漫画のアニメ化の鬼太郎なら「墓場鬼太郎」という傑作があるじゃないかと。
なぜここでもまたヒーロー鬼太郎を描かないのかと。レーティングもPG12であることを知ったときもそっちに振り切るのか…と非常に冷めた気持ちだった。

前置きが長くなった。
とまあこんな文句をウダウダ言っていて何だが、これは面白かった。
単純にいち映画としてよくできている。
原作の鬼太郎が持っていたダークな世界観を生かしつつ、いわゆる怪しい村もののホラーサスペンスとして無類に面白い。何度か衝撃の展開にゾクゾクしてしまった。
しかもバティものとしてもアガる展開はあるし、水木と鬼太郎・父がこんなに好きになるとは思わなかった。
悪役の極悪ぶりは、僕が今年見た映画の中では断トツトップで溜飲の下がる展開も用意されているのもいい。
戦争描写もハッキリ言ってゴジラマイナス1より描けていたと思う。
そしてラストはかなりぐっときて、「そうやってつなげるのか!」と思わず映画館で声が出た。


※以下少しネタバレ※
このつながり。
早い話が原作の鬼太郎誕生エピソードにつながるわけだが、しかし微妙に原作とは違う。
まあそれはそれでいいのだが、原作の絵を使っている以上、これは正史とすることなのだろうか。
アニメ・ゲゲゲの鬼太郎はいい意味で2次創作的な立ち位置であったはずで、制作者も6期の際にその旨の発言をしていたように思う。
にも関わらずその踏み込みはちょっと一線を越えたように思う。
とはいえこういうモヤモヤを感じるのはうるさ型のマニアなだけで、そういう感情を抜きにすれば文句なしに面白い傑作だったと思う。

20231201 再鑑賞