ShojiIkura

幕が下りたら会いましょうのShojiIkuraのレビュー・感想・評価

幕が下りたら会いましょう(2021年製作の映画)
3.7
 監督の、表現方法のこだわりが顕著な映画。ストーリーを説明するような台詞がほとんどなく、話が進んでいって、ああ、さっきのはこういうことだったのか、これがあったからこうなったのか、と気づくことがしばしば。妹の死の前に防犯カメラに映っていた映像など最後まで見せず、でも、何が映っていたかは連想できる、というあんばいだ。
 そのため、「え?え?」「んん?んー?」と理解が追い付かないまま話が進み、感情をのせづらいのだが、恐らくこれは主人公の感情とリンクしていて、過去から引きずること、現状の行き詰まり、親との確執、そして妹の死と、元々あった整理できないことがさらに積まれ、処理しきれない主人公の心情とのリンクだと思う。なので主人公は度々心ここにあらずな状態になる。
 その状況から変わるタイミングは、受け取った香典を返しがてら元父(と思われる)の家を尋ねたところからであろう。そこからは主人公に強い意志が宿り、エンディングにてようやくこちらも感情を乗せられるのである。
 映画通の人たちを唸らせる表現方法だと思う。しかも監督は弱冠25歳の女性だというのだから驚く。
 鉄道愛を熱く語るなど、好感度の高い元アイドル松井玲奈が、不快感満載な主人公を演じるなど、俳優たちの演技もこの表現をリアルなものにしている。
 一方でわかりやすさを求める筋には、訳がわからず退屈に感じてしまうかもしれない。
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