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コーダ あいのうたのtubameのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
3.8
聴覚障害を持つ家族の中で唯一耳が聴こえ、家族の手話通訳として尽くしていたルビーが大好きな歌を通して自分のために生きることを選んでいく物語。


特にあらすじは読まず、家族の温かい感動ストーリーかな?と思って観たら思いの外現実の壁を感じる厳しい内容だった。
聾者の生活の厳しさもさることながら、両親がルビーが自分たちに尽くしてくれることを当然だと思っていて、彼女の人生が犠牲になっていると考えもしないことが観ていて結構キツかった。
家族ってそんなもんかもしれないけれど...。他人のことならおかしいと思うのに、家族という枠組みに入ると途端に諸々が見えなくなってしまう。仲のいい家族だけど、どこか鬱屈している閉じた世界。ルビーの息苦しさが痛いほど伝わってきた。


そんなこんなでなかなか乗れなかったところはあったけど、ルビーの才能を見出だした先生との出会いや、妹思いの兄の存在などなど惹かれるところも多々あり(手話で喧嘩するシーンは勢いがあって好きだ)。
最終的にじんわり心が温かくなるような結末の佳作だったので良かった。
お父さんが聴こえない歌声をルビーの喉元に手で触れることで理解するシーンの美しいこと(その後の展開からして本当は唇を読めたってことなんだろうな)。
自分自身の人生を生きることにしたルビーの姿は勿論、彼女に頼ることで狭めていた自らの可能性を解放し生き方を変えた家族の姿が胸を打つ。


何もかも解決したわけではなくこの後だってきっと問題は沢山あるけれど、前向きに歩みだしたルビーを応援したくなる素敵なラストだった。
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