たかくらかずき

シン・仮面ライダーのたかくらかずきのレビュー・感想・評価

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)
5.0
これはすごい。特撮のアップデート!特撮は『実験映画』であるということに立ち戻り、その方向性に突っ走った最高の作品でありながら、エンターテイメントでもある。これすごいことだ!ドラマ性だけがエンターテイメントではないんだ!

俳優として塚本監督が出て来たように、作品からはものすごく『鉄男』的な空気を感じた。不穏に変わるカットや急な棒立ち、カメラ目線、それらに全てドラマ的な意図はなく、ただ実験映画的絵作りによって繋がっている。アニメーション、モーションキャプチャー、3DCG、ロケ、エフェクト、ジオラマ撮影、着ぐるみ、これら全てが『特撮』として並列に並べられている。とにかく既視感のコラージュによって未知の映像を作ることに挑戦しまくっている!アニメーション畑で育ちながらもずっと心は『映画監督』だった庵野秀明氏だからこそなしえたキメラ映画、まさに人造人間的改造映画!だからこそものすごく不自然でチグハグ、そこがとても愛おしい。

テーマとなる『幸福』についても、怪人それぞれが持つ社会から外れた幸福論や快楽。これはシュヴァンクマイエルの『悦楽共犯者』を思い起こさせた。社会における逸脱者たちの愛おしさよ!とにかくこんなおかしな『特撮』映画が今生まれてしまったことに本当に拍手喝采です。もう一度見るぞ。
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