すえ

女と男のいる舗道のすえのレビュー・感想・評価

女と男のいる舗道(1962年製作の映画)
5.0
記録

【アンナ・カリーナの果てなき孤独】

めちゃくちゃ最高じゃないですか、カッコイイし寂しすぎる。アンナ・カリーナと『裁かるるジャンヌ』、その孤独。

とにかくキャメラがよく動く、撮り方でこんなに変わるものなのか。キャメラの運動、被写体の運動、編集のリズム(銃声に合わせた編集!)、それらひとつひとつに意味があり、そうして現れる画面の価値は高い。女から男へのパン、男から女へのパン、そういったもの。

女(アンナ・カリーナ)と男が綺麗に同一フレームに収まる瞬間がほとんどない。キャメラが男から逃げ、また女から逃げる、と思えば反対にキャメラから男や女が逃げる。【女か男しかいない画面】とでも言えばいいのだろうか、女と男を同時に写すことを極端に嫌っている。そうしてアンナ・カリーナの孤独が浮き彫りになる、【女と男のいる画面】になる瞬間はアンナ・カリーナが夫婦(カップル)を見つめる視線だけなのである。

アンナ・カリーナはずっと他者とコミュニケーションを取ることを怠るが、唐突にテイストが変わる11章で初めて思考を伴い言葉を紡ぐ。彼女と哲学者が、今作においては珍しく綺麗に切り返しで捉えられ、視覚的にもコミュニケーションを行う。ここは彼女が初めて対話に至ったシークェンスだろう。

12景では即物的に撮ることで、アンナ・カリーナのモノとしての側面が強調されていて、交渉の道具として機能する。そして映画は突然に終わる、唐突な幕引きはフィルム・ノワールへの目配せだろうか。

そしてミシェル・グランの旋律!この素晴らしいスコアが孤独を深める。

ゴダールにはアヴァンギャルドというより、パンクという言葉の方が似合う気がする。パンク・ロックならぬ、パンク・フィルム。

2024,126本目 5/13 DVD
すえ

すえ