とても実験的で興味深い作品だった。
異なる4つの短編(異物、適応、増殖、消滅)が連なって完全版となるのだが正直「異物」だけではつまらない。これは駄作と思った。
それが「適応」で作品のテイストが変わり「増殖」で更に変化する。観客席の反応が前のめりになっていくのを感じた。
全編を通して主役に君臨する「アイツ」を何と捉えるか。おそらく「コロナウイルス」と見立てた観客が多かったのではないかと思う。
突如現れた得体の知れないモノを怖がり、されるがままになる人々(異物)。マスク社会など非日常に対応しなければならなくなった人類(適応)。非日常が続きすぎて感覚が麻痺した新しい社会(増殖)。そして消滅。この消滅だけはまだ人類が映画に追い付いていない。
表立って見えるチープな異物表現の中に深度のあるテーマが見え隠れする。だからこそ海外映画祭で評価されているのだと思う。
「あれはどういう意味なの?」と何でも答えを求めたがる日本人にどうマッチするか。
興行的な成績はさておき、本作が宇賀那監督を次のステージに進ませたのは明確であろう。