むぅ

ひまわりのむぅのレビュー・感想・評価

ひまわり(1970年製作の映画)
4.0
花を見て美しいと思う
晴れた空を見上げて歌を口ずさむ
「おやすみ」と「おはよう」、「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」寄り添っている言葉を当たり前に口にする

戦争で奪われてしまうものには終わりがない。

見渡す限りのひまわりはウクライナの首都キエフから南へ500キロほど行ったヘルソンで撮影されたもの。
第二次世界大戦下のイタリア。
戦争によって翻弄される夫婦の姿を描く。

オープニングから一面のひまわり畑が映し出される。
これまでだったら「綺麗だな」そう思って眺めていただろう景色。
だんだんとアップになっていくひまわりの花、こうべを垂れるひまわりが苦しい。
美しければ美しいほど、そこにある"過去"と"現在"を思って悲しい。

毎年降るな。
桜の季節になると降る雨を疎ましく感じつつも、その儚さがちょっと好きだったりする。
そんな桜の開花する時期に降る長雨のことを"桜流し"という事を今年初めて知った。
何気ない日常を紡いでいく事が、どれほど愛おしいか。
それを戦争で壊されることが、どれほどまでに残酷なことか。

戦争に勝者はないのだと思った。
戦争に勝つということは、戦争を始めないことなのでは。

物語の中盤、ソフィア・ローレンが着ている丁字色のようなくすみのかかったカーディガンが、彼女の心情やその後を暗示しているようで切ない。
いつもなら、着る人を選びそうな色が似合って良いなと思うだけだったかもしれない。

戦争が終わっても、以前日常を紡いでいた"糸"は同じものではなくなってしまうのだと改めて思った。
むぅ

むぅ