HAYATO

ひまわりのHAYATOのレビュー・感想・評価

ひまわり(1970年製作の映画)
3.6
2024年183本目
戦争によって引き裂かれた男女の行く末
『自転車泥棒』のヴィットリオ・デ・シーカが、イタリアを代表するスターのソフィア・ローレン&マルチェロ・マストロヤンニを主演に迎えた映画史に残る名作メロドラマ
結婚して幸せな日々を送っていたジョバンナとアントニオだったが、第二次世界大戦が激しさを増し、アントニオはソ連戦線へと出征することに。終戦後、帰らない夫を探しにソ連を訪れたジョバンナは、命を救ってくれたロシア人女性との間に家庭を築いていたアントニオと再会する。逃げるようにイタリアに戻ったジョバンナだったが、数年後、もう一度やり直したいとアントニオが訪ねてくる。
東西冷戦の最中に西側国がソビエト国内での撮影を認められた作品である。西側の企画をソ連に持ち込んだ例は当時の映画界では異色だが、製作総指揮・ジョセフ・E・レヴィーンと製作・カルロ・ポンティは、度々モスクワに赴いてソ連側を説得し、撮影を実現させたそう。
本作のハイライトとも言えるのが、「地平線にまで及ぶ一面のヒマワリ畑」。果てしなく広がるひまわり畑の下には無数の兵士や罪なき市民が眠っているということを知ると、ラストシーンのひまわり畑は全く違った風景に見える。ロケ地となったひまわり畑は、ウクライナの首都キーウから南へ500キロメートルほど行ったヘルソン州にあるとされていたが、NHKの現地取材で、ウクライナ中部の都市ポルタワ近くにあるチェルネーチー・ヤール村で行われたと特定されている。不都合な歴史を隠そうとしたソビエト指導部の思惑によってロケ地が特定されてこなかったそうだ。
音楽を担当したのは、『ピンク・パンサー』のテーマなどで知られるヘンリー・マンシーニ。本作のスコアは彼が手がけた数多くの映画音楽の中でも特に評価が高いもので、主題曲“愛のテーマ”は世界中でヒットした。切なくも美しい旋律は本作の内容にピッタリだ。
互いを想い合いながら引き裂かれていく男女のメロドラマを通して、戦争の悲惨さや残酷さを訴える本作。戻りたくても戻れない幸せな日々に想いを馳せるソフィア・ローレンの表情が胸を打ち、平和を願わずにはいられなかった。
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