バルバワ

ベネデッタのバルバワのレビュー・感想・評価

ベネデッタ(2021年製作の映画)
4.4
2日連続の許されタン…しかも待ちに待ったヴァーホーヴェン監督作という高揚した気分を抑えつつ劇場に足を運びました!

いやぁ…人生に筋を通す

あらすじは熱心で夢(ビジョン)見がちな修道女ベネデッタの周りはいつもトラブルだらけ!…的な感じです。

【欲深くね?】
舞台となるのは中世ヨーロッパのペシアという街にある修道院ということで主にキリスト教のお話となるのですが、冒頭から監督ポール・ヴァーホーヴェンによるキリスト教への皮肉が効いています。

幼い頃のベネデッタ家族が野盗に襲われかけ金を要求されるのですが、その次のシーンでベネデッタが生活することとなる修道院で全く同じように金を要求されるのです。

なんなら野盗はベネデッタ家族から金を取らないのに対して修道院の方はしっかりと金を取りますからね、しかもそのときの修道院長の塩対応が無慈悲で良いアイロニーを醸し出しておりました。

その後も教会特有の権力争い、男尊女卑、裏切りなどこれでもかと見せてくれるので人間が嫌いになっていきます。

特に教皇大使のエロゲスオヤジっぷりったらもう最低で最高でした。
因みにこの教皇大使を演じてらっしゃるランベール・ウィルソンは《マトリックスシリーズ》でこれまたエロゲスオヤジのメロビンジアンを好演しておりましたね!
もはや、私の中ではエロゲスオヤジといえばランベール・ウィルソンです!褒めてます!

【欲望こそが】
主人公ベネデッタはもともと模範的な修道女という感じで規律に反することはしないし、自制心を持ち熱心にキリスト教の為に身を粉にしており表情少なめな女性でしたが、バルトロメアという新人修道女との出会いや物語中盤にある役職に就いたことによりどんどん自分の欲望に忠実になり表情豊かになって、なんならかっこ良くさえ観えるようになります!

これは個人的な今作への解釈なのですが、禁欲し体制に従順であることよりも欲望を持った方が人生楽しめるというメッセージがあるのかと思います。

事実、ベネデッタは欲望の果てに自身のすべきことや課された責任に目覚め選択します。欲望を持つこと=ある種の成長とも捉えられるようなベネデッタの選択を観るにつけポール・ヴァーホーヴェン監督の豪腕は健在だと実感致しました。

【事実から】
今作のベネデッタさんの言っていることや起こったこと、見たことは彼女の中では真実であると思いますが、決して事実ではありません。

それでは今作の中の事実はベネデッタが掌や脇腹、額に傷を負ったということであり、その傷が聖痕なのかただの自分でつけたものなのかは登場人物の解釈によります。この事実を嘘偽りなく解釈したものが真実なのです。

そして、面白いのは作中ベネデッタを疑う人も肯定する人も事実確認をしようとせず、各々の解釈に基づき行動することです。恐らくそこまで頭が回らない程宗教に頭から足の指先まで浸かってしまっているということもあるとは思いますが、事実確認をしてしまうと宗教自体が内包している欺瞞性や辻褄が合わないところにも目を向けなくてはならなくなるからではないでしょうか。

そう思うと、登場人物のほとんどが天国の家畜でベネデッタは地獄の王という《失楽園》的な皮肉な解釈もできて楽しいです。

【とんでもない!】
クライマックスはもう阿鼻叫喚でこの世が地獄と化したかと思うほど壮絶でした!もう、モラルなぞクソ喰らえな圧倒的な暴力に目を奪われてしまいスカッとしてしまう自分もいました。

そして"あの人"は街を救う為に自ら業火に飛び込んだのか、それともあのコに会いたかっただけなのか…凄く切なくなる最期でした。

因みに「和平のキスよ!」は今のところ2023年ベスト台詞ですね!

【最後に】
とにかく御年82歳とは思えない程の元気モリモリでこちらを観ているこちらがクラクラするような圧巻の作品でした!

描写がキツく目を背けたくなる作品ではあると同時に目が離せないので傑作ですし、ベネデッタのことは100%信じることはしませんが自身で行ったことに一本の筋を通した後ろ姿はかっこいいとは感じずにはいられません!
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