kanegone

ディア・エヴァン・ハンセンのkanegoneのレビュー・感想・評価

4.3
この映像化はすごいです。
あくまで、歌と音楽が肝だとは思いますが…

各登場人物の独白とか妄想的な部分が、映画の中では美しい歌となって昇華されてるんですが、現実と妄想の混ぜ方が神がかり的にうまくいってて、

流れるように、セリフから歌へと雪崩れ込んでいくのです。

そして、そこで流れる歌と音楽がとてつもなく美しい。グッとくる素晴らしいメロディに、気持ちのこもった歌声、特に主人公が放つ琴線にしっかりリーチする歌声、

これに引き込まれるのです。

冒頭からエンドロールまで、音楽に酔いしれる作品だと思います。
歌詞も、とても良いのです。

ただ、通常の?映画のように、ストーリーやキャラクターに感情移入していくと、ツッコミどころが多すぎて乗り切れないかな、と思います。

私は歌唱シーンにだけ感情移入して観れたので、心の澱みが浄化されるような感覚がありましたが、歌唱以外の場面に感動や納得を求めて観たら逆の感情に囚われていただろうなぁと思います。

というわけで、これは美しい音楽と歌声に、滑り落ちるようにして引き込まれていく感覚、没入感を味わうための作品だと割り切って、歌唱シーンに集中して観ていただけたら、非常に楽しめるのでは。と思います。

個人的には、邦画「ダンスウィズミー」を観た時に期待したものが、この映画にはたっぷり詰まってました。

頭の中でイメージはできても、作品としてこのような映像化を実現するのは、とても困難なことだと思います。
それが達成できている映画を、リアルタイムで観られる幸せ。噛みしめながら、楽しませていただきました。

この上なく良質な歌が詰まった傑作。
憂鬱を振り払うのに苦労した経験のある方には、ぜひ一度観ていただきたい作品。
本編と同じくらいメイキングが重要な映画。
kanegone

kanegone