むるそー

MEMORIA メモリアのむるそーのレビュー・感想・評価

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)
4.4
突然の爆発音。頭から離れないその音の正体を求めて、ジェシカは音楽家の青年エルナンを訪ねる。音の再現に成功しジェシカが再び彼を訪ねると、彼の存在などまるで最初からいなかったかのように消え去ってしまう。そして、同じ名前の老いた釣り人・エルナンと出会い…

"記憶"がテーマの本作。人間が時間の流れを意識して連続的な行動を取れるのは、記憶のおかげだ。記憶があるから、過去があって、現在があって、未来がある。でも記憶ってそんなに全面的に信用していいほど確かなものなのだろうか?

僕自身もたまに記憶への信頼が揺らぐことがある。例えば、経験したことがないはずの事象への既視感。人によってはそこに前世を感じたりするのかも知れないが、僕の場合は解消しようのない不安に襲われたりする。他だと、睡眠時の意識のリセットもそうだ。ベッドで目覚めたとき、自分が何者であるかを判断できるのは記憶だけ。もし毎日違う人間の生を過ごしてたとしても、記憶と肉体さえリンクしていれば気づかないだろう。

この映画はそんな記憶への不信頼性に刺さるような作品で、僕は結構好きだった。

一見問題なく進行していく物語だが、注意深く観てみると登場人物の言動や起きている事象など節々に違和感が残る。それは寝ているときに見る夢の中の世界のような、曖昧な世界の法則に支配されている感覚に近い。そう考えると本作はジェシカの夢の中の世界なのかも知れない。
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