第42回 青龍映画賞(2021)最優秀作品賞・監督賞・男優助演賞 (ホ・ジュノ)・美術賞(キム・ボムク)・韓国映画最多観客賞を受賞した“韓国のタランティーノ”と称されているリュ・スンワン脚本・監督作。
共同脚本にイ・ギチョル。
1991年に突如としてソマリア内戦に巻き込まれてしまった韓国と北朝鮮の大使館員とその家族たちによる首都モガディシュからの脱出を描いた実話に基づく物語。
近年になって、ようやく事の顛末が公表されたようで長きにわたり脱出劇の真実は語られることはなかったという。政治的意味合いが強くて語ることは許されなかったのだろう…もともとは同じ民族なのに。真実を語ることが許されなかったこの南北の緊張状況こそが異常なことだと思う。
福岡を首都とする南側をアメリカが管理、札幌を首都とする北側を中国が管理する分断国家となった日本を描いた、かわぐちかいじの漫画『太陽の黙示録』をふと思い出す。南北に分断された日本を想像しながら、このモガディシュを見ると、より熱いものを感じられると思う。
ケニアの飛行場に着いた時に、一緒に乗っていた他の国の人たちが魔法のように消えてしまい、韓国と北朝鮮の2カ国だけにスポットライトを当てすぎてる演出過多な部分は少しだけ気になったが…飛行機の中での別れの場面が感情を揺さぶりまくってくるので問題ない。この別れが本作のハイライトである。
いまいち頼りなかったキム・ユンソク演じるハン大使が、飛行場の空気を察知して機敏に今生の別れを促すのが堪らない。
全身を北の思想で統率し、自分の感情は押し殺し続けるという見事な演技を披露したリム大使を演じるホ・ジュノ。完全にキム・ユンソクを喰ってしまうほとの素晴らしい演技。
公式HPよりー
実際に『モガディシュ』のスタッフは渡航禁止国家に指定されているソマリアの代わりに、異国的な風景を再現できる空間を探し出すために4カ月間もアフリカでロケハンを行った。
懸命な努力の末、実際にソマリアと似ている環境のあるモロッコの都市エッサウィラを最終撮影地に決めた。
ロケハンだけで4ヶ月も?!
それも国内ではなくアフリカを…ロケハンの時点で日本映画界は全く勝てそうにない。
さらに…
公式HPよりー
シナリオと一致した撮影環境を作り出すために撮影6カ月前から政府の協力を得るのは勿論、現地で撮影した写真資料などを通じて空間に合うコンセプトを作り、映画の背景とそれに合った空間を作ることに重点を置いた。彼らは舗装された道路の上に直接土を重ね、90年代当時のソマリアの舗装されていない道路を完成させ、モロッコの建物の上にソマリアの建築様式まで再現し、リアリティを追求した。
舗装された道路の上に土を重ねたのかよ…めちゃくちゃ面倒くさいことしてる。
渡航禁止国家のソマリアの実情なんて、多くの人には解りゃしないと思われるし、そこまでしなくてもと思ってしまうのだが…そこをこだわり通したことが何よりも素晴らしい。
やはり細部に神は宿る。
あとは舗装された道路の上に土を重ねるという、それをやりきる情熱が天晴れである。
さらに実話ベースの本作が韓国では2021年度のNo. 1ヒットとなる客層だというのがまた羨ましい…
因みに日本の2021年
興行収入ランキング
①シン・エヴァンゲリオン劇場版
②名探偵コナン緋色の弾丸
③竜とそばかすの姫
④ ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”
⑤東京リベンジャーズ
⑥るろうに剣心 最終章
⑦新解釈・三國志
どうなってんだよ?
この国には子供しか住んでねぇのかよ…
情けない。
恥ずかしい。
サブカルチャーであった、オタク文化がいまやOtakuとして日本を包み込み、いつの間にかサブではなくなって、クールとしてメインカルチャーとなってしまった。
これはいつ頃からか?
クールジャパン機構からか?
影でヒソヒソしていたオタクたちが大手を振って闊歩するようになった。そこから、なにか文化の土壌が低い?悪く?なった気がする。
隠れてコソコソしてるくらいがちょうどよかったと思う。アニメなんか特に。
これがメインストリームになってしまったことによる弊害が途轍もなく大きすぎて。
もはや回収することは不可能。
自民党が統一教会に侵食されてるようなもんだろう…
オタクを否定しているわけではなく、それ一辺倒になってしまった感を危惧しているのである。
話がめちゃくちゃになったが、車で逃げるシーンは本当にどうやって撮影してるのか分からない。クルマ四台が連なって走るところを、カメラが後部座席の窓ガラスを突き抜けて、次々と後ろのクルマの中へ飛び込んでは、また突き抜ける。これもコンピューター処理してるのか?
メイキングと監督のオーディオコメンタリーをBlu-ray特典とかして撮影方法の答え教えてくれないかなァ。
前半が少したるくて眠くなるのが残念。