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ビリー・ザ・キッドの冒険のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

ビリー・ザ・キッドの冒険(1971年製作の映画)
4.2
【砂から生まれた女は、水に負ける男を引きずる】
シネフィルの間で時折スゴい監督だと聞くリュック・ムレ。ようやく作品に遭遇しましたので観ました。確かにハイレベルな作品でありました。

銃声が響き渡る。車輪が転がる。これにより、決着がついたことが分かる。カメラが横移動すると死が横たわっている。この確かな演出でリュック・ムレの面白さが分かる。ジャン=ピエール・レオが馬を引きずりながら歩く。強烈な坂を一生懸命のぼり、旅をする彼は砂の空間を歩いていると、地面から女が出現する。彼は女を紐で縛り、奴隷のように扱いながら冒険をする。そんな彼を、ガンマンや先住民が追いかけていく。

徹底的に空間を活かした撮影が楽しい。河の流れに逆らうように歩く群れを映す。ジャン=ピエール・レオも後に水に逆らうが、敗北する。これをきっかけに、女との関係が逆転し、高台からロープで引っ張ってもらうような関係になるのだ。そんな二人のうつろいゆく関係性を、刺客が邪魔するのだが、青い岩の影からニョキニョキ先住民が現れ、にじり寄ってきたり、二つの岩陰から狙うガンマンが現れたり、瀕死のジャン=ピエール・レオを女が起こそうとするが中々起きず、狙撃されて初めて命懸けで河を渡って逃げていく。画の外側の音の存在で緊張感や、観る者の関心を持続させる作りは映画の見本とも言えるだろう。また、『はなればなれ』における銃で撃たれても中々死なない人という一発芸を踏襲しているところも面白いポイントだったりする。

ちなみに、本作の編集はジャン・ユスターシュが行っているのだが、彼の作風からイメージできない躍動感あるアクション映画であった。
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