らんら

ミラベルと魔法だらけの家のらんらのネタバレレビュー・内容・結末

ミラベルと魔法だらけの家(2021年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

圧倒的映像美…派手な色使いと派手なカメラワークでアナ雪のような壮大な舞台ではないのに華やかに見えてとても素敵です。

人物の動きとかちょっとした表情とか、ディズニーだからこそ出来る描写の細かさ。
キャラクターの腕の毛穴まで描いていて描き込み方が異常です。まさに変態作画。

映像技術の面でピクサーを超えた作品だと思います。

音楽もコロンビアの風土文化を感じる軽快でリズミカルな曲で良かったです
ラップが入ったり自由な感じで聴いてて楽しい曲が多かった


ストーリーは、ディズニーが本気でつくったなろう系小説って感じがします。

アナ雪では唯一魔法を使えるエルサが疎外感を感じていたけど、この作品ではその逆。

表面上は元気に振舞いながら、家族の顔色を伺って自分の存在意義に疑問と不安を募らせていくミラベルのあのじわじわ いやーな描写…

お婆ちゃんも両親も従兄弟達も酷い人という訳じゃないし悪気があるわけじゃないというところがまたじわじわ嫌な感じを助長させます。

家族の魔法の力が急に弱くなったのは、お婆ちゃんが「家族のあるべき姿を見誤るようになったから」だと思うんですけど、

とにかく「家族」の描き方が生々しい。
こんな家で育ったミラベルがひねくれずここまで優しい人間に育ったのは奇跡だと思います。

正直言って開始20分くらいでまじで気分が悪くなりました。
けれどディズニーがここまで「家族」の嫌な部分を描くのって凄い。

細かい表情まで作画表現されてるから心理描写もそれに伴ってとても細かくなってます。
観てる人が気分悪くなるくらい感情移入してしまうという凄さ。

マドリガル家って実力主義、排他主義でかなり怖いんですけど、それはお婆ちゃんと故人のおじいちゃんが、過去に故郷を暴徒だか隣の村の人間だかに「力」によって淘汰され、追い出された過去があるからだと思います。

お婆ちゃんが過度に「完璧な力」や人を統率できる程の力を家族に強いるのはやっぱり自分も過去に圧倒的な力によって大切な故郷、家を手放す事になったから。
その分、再び手に入れた「家」に執着することは必然です。

というのはよく分かるんですけど、ミラベルが可哀想すぎてなんか見てられなかったです。

お婆ちゃんが彼女を「いないもの」にしたがってるのが露骨すぎてかなりキツい

母親と父親はそんなお婆ちゃんに強く出ることが出来ず。いとこや姉妹からは煙たがられるし、街の人達からは小馬鹿にされる。(皆無自覚なのがきつい)
それでもミラベルは変わらず家族を愛し続ける…

気持ち悪すぎるけれど、家族って意外とそういうものなのかもしれない。 ブルーノもですが、どんなに蔑まれても、煙たがられても産まれた瞬間から子どもは親を無条件で愛してしまう。家族というどう足掻いても切れない縁に縋ってしまう。

良く言えば「愛」だけど悪くいえば「呪縛」だと思います。

ここらへんのテーマはリメンバーミーと重なるところがあります。

作中、特に怖って思ったのが、ギフトをさずかった子ども達には自分の部屋が与えられるのにミラベルだけは一人部屋じゃなくて、ずっと「子供部屋」にいるという描写…

魔法を授からない=未完成or欠陥品or子どもって考えをお婆ちゃんが持ってるからだろうけど、客観的に見れば明らかにもうミラベルは一人部屋を持ってもいい歳の女の子で、このシーンで普通の人間と彼ら家族の価値観の違いにぞわっとさせられます。
私はこの生理的にキモイ描写、ちょっとすきです。

ディズニーは基本的に
「家族は絶対に大切な存在」「自分を犠牲にしてでも守るべきもの」っていうのが前提なことが多いです(Pixarは別として)

それが悪いわけじゃないけど
このセオリーを破る作品をいつか出して欲しいです。



お婆ちゃんはマドリガル家の魔法という「力」で村を統率しているので魔法が使えなくなって村の人が不安になったり暴徒化するのを恐れています。

しかし終盤、魔法を使わず自分たちの手で家を再生していくシーンでは村の人達も協力してくれて、お婆ちゃんの恐れていたことにはなりませんでした。
私はこの時点で もうこのまま「魔法の力」を戻さなくてもいいんじゃないかって思いました。

ギフトっていうのは過去にお婆ちゃんとおじいちゃんの「家族を守る」という強い意志によって授けられたものなんだろうけど、

最後はその魔法を使わなくても、大きな力が無くても自分たちは生きていける、「家族」を守ることが出来るんだってお婆ちゃんが改心するエンドで良かったんじゃないでしょうか。

なのにどうして最後の最後で結局魔法の力が戻っちゃうのか。

お婆ちゃんとミラベルが皆で建て直した家を見て「新しい家も良いわね」「完璧じゃないけど」 「私達も完璧じゃあない」っていうやりとり、本当に好きで感動したんですけど、

ラストで実はミラベルも魔法を持っていました!皆の力も戻りました!
これでみんな元通り!で終わってしまった…

ミラベルはお婆ちゃんの力を継承し、こうして代々繋がれていく。
「力」と「家族」の呪縛から解かれないまま…

魔法を手放せないあたりやっぱりディズニーだなと、ラストで少しガッカリしました。


スピンオフとかで、今度はミラベルの孫がミラベルのギフトを受け継ぎ家族を守る役割を継承する話とかやってほしいです。
その孫はアメリカに出て俳優になりたいけど家と家族を守るギフトを持っているせいで村を出ることが出来ない的なストーリーを…
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