あおき

私ときどきレッサーパンダのあおきのレビュー・感想・評価

私ときどきレッサーパンダ(2022年製作の映画)
4.2
噂通りめちゃくちゃ良い…!!

(社会規範の中で)品がないとか非常識だと揶揄され得る個性の発露を「レッサーパンダ化」として表現して、「個性は危なっかしさと愛おしさの両面を持っているし、人(立場)によって捉え方も違う」というメッセージがすごい伝わりやすそうで巧い。

「個性の発露」は全人類に共通するメッセージだけど、更にレッサーパンダ化を女性特有のものとすることで、社会的にはもちろんだし、劇中であった通り生理現象に暗黙のルールがあるように、身体的にも女性のあるべき姿を要求する社会への問題提起も広く突くことが出来ている。

それが一族の縛りであり、その“あるべき姿”を1番に要求してくるのが家族であるということ。
作中でメイが制限されることはたくさんあった(家庭内の義務、恋心のめざめ、趣味など)けど、恐らくそれが積もり積もった感情爆発がレッサーパンダ化を加速させたのだろう。パパが「もうなったのか」みたいに言ってたあたり、現代の子供たちが親に縛られることが増えていることを示している。それが女性なら尚更。古典的な枠組みと時代の変化との挟撃。

自分も昔はあらゆる趣味を親に制限されてたのでかなり共感してしまい、キツかった。今でも公にできない趣味はあるし(父親が強火のレイシストなのでK-POPが好きだなんて言えない)。だから音楽関連のシーンとか特にツラかった〜、、、

そしてクライマックスでは毒親を一度明確に悪としたうえで戦闘(真っ向からの対話)を描いているのも凄い。「ミラベル」では一族を縛っていたお婆ちゃんが許されてる空気があって若干ウーーンと思ったんだけど、それが改善されてるように感じた。
さらに「親の体験と思いやりが子を縛る」という世代ギャップと不器用な愛が生むやむを得なさも表現しながら、各世代の女性の過去も否定せず、全てのスタンスを認めるラストも素晴らしかった。

思いのほかファンタジー要素が多くて、もっとそれを前面に出した作品&PRにしてたらそれはそれで売れ行きも変わったのかなーとかも思ってしまう。(正直オープニングとかマジでつまんなそうなオーラあって俺も動揺したレベル)
でもあくまでリアルな思春期が舞台ってのがやっぱこの作品に意味をもたらしているよなーうん。
あおき

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