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最後の決闘裁判のkuuのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.0
『最後の決闘裁判』
原題 The Last Duel
製作年 2021年。上映時間 153分。
映倫区分 PG12
巨匠リドリー・スコット監督が、アカデミー脚本賞受賞作『グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち』以来のタッグとなるマット・デイモンとベン・アフレックによる脚本を映画化した歴史ミステリー。
1386年、百年戦争さなかの中世フランスを舞台に、実際に執り行われたフランス史上最後の『決闘裁判』を基にした物語を描く。
『キリング・イヴ Killing Eve』でエミー主演女優賞を受賞したジョディ・カマーが、女性が声を上げることのできなかった時代に立ち上がり、裁判で闘うことを決意する女性マルグリットに扮したほか、カルージュをマット・デイモン、ル・グリをアダム・ドライバー、カルージュとル・グリの運命を揺さぶる主君ピエール伯をベン・アフレックがそれぞれ演じた。

騎士カルージュの妻マルグリットが、夫の旧友ル・グリに乱暴されたと訴えるが、目撃者もおらず、ル・グリは無実を主張。
真実の行方は、カルージュとル・グリによる生死を懸けた『決闘裁判』に委ねられる。
勝者は正義と栄光を手に入れ、敗者は罪人として死罪になる。
そして、もし夫が負ければ、マルグリットも偽証の罪で火あぶりの刑を受けることになる。
人々はカルージュとル・グリ、どちらが裁かれるべきかをめぐり真っ二つに分かれる。

今作品の興行成績が低迷したって事を知り個人的には驚いた。
かなり壮大やし最後の決闘は手に汗握る連続やったけどなぁ。
興行的に成功しなかったひとつに、ディズニーが映画の宣伝にほとんど力を入れなかったもあるんじゃないかと思う。
これは、ディズニーが20世紀フォックスとの合併から引き継ぎ、契約上公開を義務付けられていた作品の多くに当てはまるようやし。
何故、今作品を弁護するかと云うと、小生の中では善き映画やったからです。
ビジョンとオリジナリティに溢れた、本当に巧みな映画製作やったし、羅生門的な効果が魅力的な結果を生んでいる。
羅生門はすべてが森の奥で起きたことだから3人以外に出来事を知る者はいなかった。
だから3人はそれぞれ自分に都合のいい嘘を証言するって感じやけど、『最後の決闘裁判』の場合はある程度は事件は明らかやし、衆人環視の中で起きることもあるから大きな嘘の入る余地はないとは思う。
ただ、それぞれの主観は同じ出来事を別のものとして受け取らせる。 
巧みだなぁ。
撮影、編集、当時の衣装デザインは見事、そして、スコアも巧みでした。
何より演技も素晴らしかった。
ベン・アフレックの演技が見せ場をつくったという声や、アダム・ドライバーのファンが多いという理由で盛り上がっている部分もなきにしもあらずやけど、小生もこれらの俳優を愛しているが(今作品の中の役柄は胸くそと感じたが)、ジョディ・コマーとマット・デイモンのニュアンスに富んだ演技がこの映画の核心であり、もっと愛されるべきだと思う。
両者とも賞に値する演技を披露し、3つのパートで最も幅広い演技を見せている。
デイモンのキャリアの中でも善き作品の一つやお思うし、彼はこの役柄に唯一無二の適性を発揮し、数々の陰影のある人物像を見事に表現している。
そして、デイモンとコマーが共に心臓部であるならば、ジョディ・コマーはただ一人で今作品の魂であると云える。
彼女は本当に驚異的で、インスピレーションに満ちた選択と感情的な共鳴によって、この広大な物語を支えている。
中世の舞台は、リアルで、硬質で、かなり実現されていると感じられる。  
そして、今作品のメッセージは、時代を超越し、タイムリーであり、普遍的であり、悲痛なほど親密でした。
ジェンダー政治、レイプ文化、有害な男らしさについて長い間鋭い視線を向け、ストーリーテリングの勢いが止まらない中でも、メスのように正確にこれらのトピックを解剖している。
上映時間の長さにもかかわらず、退屈な瞬間は個人的にはなかった。
戦闘シーンは信じられないほどリアルで、戦場と化したフランスやスコットランドへといざなう。 今作品のクライマックスは、これまで見た中でも直感的でサスペンスフルなものの一つやった。
今作品は、この歴史大作の芸術性とスケールの大きさを存分に味わい、大きなスクリーンで見ることが出来なかったのは残念でならない。
#MeTooに関連するトピックを扱っている点で、『プロミシング・ヤング・ウーマン』と映画ディスカッションするのに適しているとさえ思える。
性的暴行のシーンが2つ長く続くため、今作品にはトリガー警告(〔トラウマなどを呼び起こしかねないことを伝える〕事前警告 )が出されている。
とても有意義な153分でした。
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