あおき

LAMB/ラムのあおきのレビュー・感想・評価

LAMB/ラム(2021年製作の映画)
3.7
雰囲気はめちゃくちゃ好き!!映像の綺麗さだけで元は取れたかなと思う。最近、体がなぜか広大な自然の映える映画を求めてるのもあって…。

子(親権)を奪う・奪われることで母性を描いた物語という点で「八日目の蝉」「朝が来る」を思い出した。まずそれを人間VS人間じゃなくしてみようという発想が斬新すぎる。

所感としては、とにかく美しいけどキショおもしろい、アダちゃん萌え映画だな〜〜と思って観てた


けど、大自然と動物に溢れた環境で、ヒトという動物のみが親性や愛を優先する「人間中心主義」的なエゴの行く末を見せられている虚しさみたいのがずっとあった。

作業的に耳に番号を杭打たれる子羊と、人に近しい姿で生まれただけで人間としての待遇を受けるアダ。
家畜とヒトの対比により浮き彫りになる曖昧な境界。犬や猫といった「人間に飼育されて生きているのに家畜とは異なった地位にある動物」の存在も、境界の曖昧さを裏付ける。

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ただキリスト教モチーフを全面的に出した映画としては、テーマの軸感が弱いかな…同じく今年公開したA24作品「X エックス」の方が纏まってた。

モチーフが複雑に絡み合いすぎていて(後述)、「キリスト教要素をブチ込んでおけば考察し甲斐のある映画になるだろう」とか思ってないか?と邪推してしまうほどには散逸的で説明不足。
こんだけやっといて冒頭に一節の引用がないのも珍しいし。

説明しすぎないのが映画の妙だとしても、マジで鑑賞者に任せすぎ。

前半に書いた人間性を切るテーマもぶっちゃけ正解の自信ないし、本筋とモチーフの両軸をもうすこし明確に描いてくれたら堅牢な魅力の作品になっただろうに…!と惜しい気持ちです。いやでも好き。






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キリスト教モチーフの複雑さ

アダ⇨アダム=キリスト(羊)=悪魔の子(子山羊)
マリア⇨聖母=良き羊飼い=マリア殺しの大罪人

みたいな…?


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ラストシーンの表情切り。
親権問題の映画ともとれる
田舎=家族のつながりが強く、家族以外もそう。動物ですら。
自然との関わり=妖精などの伝説の流布
アイルランドと羊の歴史
映画の不可解さに対するネガティブな感情の原因を考えると、当然だと思っていたことに確信がなくなる
本作自体があらゆる逸話の雑種
睨む羊、、人間への怒り、猜疑

「予期せぬ、説明のつかない喪失」
運命をコントロールできない、人間の矮小性と脆弱性の象徴

あえて非現実性に触れないことで、現実的にする

喪失から得られるもの
喪失を埋めるための、不安定な喜びへの屈服

自然の超越性、それが与える運命──喪失
あおき

あおき