がんがん

THE FIRST SLAM DUNKのがんがんのネタバレレビュー・内容・結末

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

圧倒的🦺!!

2022年ベストオブベスト!!!

スコア7978点付けたい…


桜木花道から宮城リョータに主人公ポジションを変えて、山王戦の死闘を2時間に見事おさめた井上先生の手腕よ。リアルやバガボンドを経てアウトプットされた死生観(まさかスラムダンクでサバイバーズギルトを描くとは思わなかった)も見事に本作に織り込まれている。まさに2022年版にアップデートされたスラムダンクでした。アニメ版へのリスペクトも大いに込められてました。正真正銘、誰も知っているけれど、誰も知らないスラムダンクでした。

THE FIRSTと冠が付いた本作ですが、宮城リョータのポジションであるポイントガードが1番の選手と呼ぶそうで、だからTHE FIRSTなんか…そしてわたしたちが知っているスラムダンクとは少し異なる、まだ知らない物語ということも含んでのタイトルなのか…と震えました。もしも続編THE SECONDができるなら三井の物語ですね。

ラストのNBAで沢北と対峙するのが流川ではなく宮城リョータということに全ての想いが込められていると思う。「チビ」な「日本人」があのコートに立つことの意味。井上先生が託した日本のバスケット界への想い…

ドルビーアトモススピーカーのスクリーンで観れたので、とにかく観客として応援席から鑑賞しているかのような没入観が素晴らしい。バッシュのキュッと擦れる音、ボールがダムダムとコートに弾む音、ハァハァと息切れる音、応援席のガヤなど、あらゆる音の立体感が良かったです。来週からドルシネも始まるのでおかわり確実。


10-FEETの「第ゼロ感」が言葉通りにスラムダンクのために生まれてきて神曲すぎて死にそう。歌詞の中に仕掛けられたパスとかドリブルとか言葉が楽しい。本編中で何回も使われてたので相当井上先生のお気に入り曲になってると思います。

「Buzz up ビート!」→ブザービート

「Coyote steals」→高揚するにも聞こえるし、獣が素早くスティールするという宮城リョータにピッタリなフレーズ。

「クーアザドンイハビ」→最後がリハビリに聞こえるし、ビハインドザアーク(3Pラインよりも後ろからのシュートのことらしい)の逆さ文字なのがおもしろい。

何回もリフレインする「Swish da 着火 you」は何の言葉に掛けてるのか気になるので、わかった人は教えてください🥺

https://youtu.be/v6ddeotX7K0



もう最初から最後まで2時間泣いてました。頭の中で原作の試合が流れながら、スクリーンで動くメンバーたち。エピソードや台詞の取捨選択が絶妙で、もしかしたらスラムダンクを読んだことない人でもすごく楽しめる作品になっているのかも。あのシーンある!あのシーンは無かったか、なんて思いながらあっという間の2時間でした。

漫画をアニメーションとして表現している作品の最高峰かと思います。井上先生自身が監督となり、作画もそうとう入ったとのことでミリ単位の手直しを何度も繰り返しブラッシュアップしたとのこと。ラスト数十秒の無音のシーン、白黒の漫画の作画を映画でも再現しながら、桜木と流川のハイタッチのカットでカラーに戻るという…最終巻そのまままるごと完全再現。

あえて「左手は添えるだけ」を無音にした覚悟に感動しました。誰もが大切にしている名言だからこそ、みんなの心の中でのみ響かせるためあえての無音表現。あれは相当わたしたち観客を信じていないとできない演出です。

あの台詞はこう魅せるのか、とかあの台詞は無かったかなんて思い返すだけでグッときて胸が詰まる。とにかく原作には素晴らしい台詞が満ち満ちているんですよね。


山王戦で死ぬほど泣ける台詞ランキング

🥇「ぐひっ…ぐひん…湘北に入ってよかった…」

モブである一年の石井が、三井が命懸けの3Pを決めたあとに呟いた台詞。ベンチから必死で声を枯らせて応援する。スタメン5人だけに焦点をあてるのではなく、選ばれなかったひとたちにもスポットを照らしているということ。コートの中で必死に戦っている5人だけが湘北メンバーではない。スタメン5人はもちろん、監督も、ベンチメンバーも、応援席のひとたちも…全員合わせて湘北メンバーなのだ。メガネ君は誰よりも大きな声で声援を、ヤスは黙って信じて、晴子さんはシシューと叫ぶ。湘北メンバーとして全員が全員頑張っている。絶対この台詞はカットされると思いきや、ちゃんと本編中で出てきて感無量です。


🥈「静かにしろい、この音が…オレを蘇らせる何度でもよ」

諦めの悪い男三井。その原動力にあるのが恩師がかけてくれたあの言葉。諦めたらそこで何もかも終了だと誰よりも理解している三井だからこそ、誰よりも諦めないということを最後まで諦めないのだ。本編でも劇伴を無くして、静寂からのボールがゴールに入る小さな音がとても綺麗で。ラスト1分からの最後のブザービーターといい、まるで頭の中で漫画が流れていたかのような。とにかく音の緩急が巧みな作品でした。


🥉「まだ何かを成し遂げたわけじゃない、なぜこんなことを思い出してるバカめ」

まだ試合の途中なのに思わず感情的になるゴリ。勝ち負けを越えたそれ以上のものをようやく手に入れることができた。もちろん勝ちを諦めたわけじゃない、それでもひとつの到達点に届いた。このあとに続くメガネ君の「ずっとこんな仲間が欲しかったんだもんな…」とリンクする。ようやく同じ意志を持ったメンバーと出会えたこと、そしてコート上にメガネ君自身はいないことも胸が熱くなる。自分はその実力がないけれど、それでも諦めずにゴリのそばに居続けたメガネ君の想いがたまらなく尊い。


4位「誰もそんなところ見てやしねーだろうが…」

河田が桜木のポテンシャルにいち早く気づいたところ。誰も見てやしないだろう→河田自身の自分のことも誰も見てくれてやしないだろう、に繋がるのもよい。急激に背が伸びた河田は幾度とポジションを変更させられてきた。その裏に想像もつかないほどの血の滲む努力があったはずで、誰にもその姿を見せることなく黙々とひた向きに練習に向き合ってきた河田だからこそ、桜木の努力にいち早く気付くことができたと思う。


5位「はいあがろう、「負けたことがある」というのがいつか、大きな財産になる」

絶対王者、常勝軍団山王。もはや勝つことは当たり前、負けることなんてありえない。弱小チームからジャイアントキリングされるなど許されない。弱小チームであっても相手の研究も疎かにしない。だからこそ、その衝撃と精神的ダメージは計り知れない。ありえない敗北を味わった山王メンバーに同情するでもなく、叱咤するでもなく、激励するわけでもなく、ただ敗北という事実を受け止め堂本監督はこの言葉を残す。山王メンバーの更なる成長を信じて。


なんかもう…思い出しながら書いてるだけで涙ぐんでくるのはなぜ…

今日はオールナイトで山王戦を読み明かしたいと思います。





ドルシネ版をおかわりして…

改めて感じた構成と緩急の妙。完璧すぎる作品でした。試合とヒューマンドラマの比率が素晴らしい。試合のみ一気に魅せられると、恐らくハリウッド大作あるあるの「迫力あるアクションが続き過ぎると飽きてきて眠くなる状態」になると思う。なのでもっと観たいという腹八分目状態で上手いことドラマパートが挟まれるのが最適な塩梅でした。

ラスト1分のあの演出から逆算して、音の計算も徹底的にされていました。観客側の感情の波に合わせて劇伴を巧みに調整していて。クライマックスの湘北の追い上げに掛けて「第ゼロ感」も編曲されてました。合計4回使われていたと思います。インストだけ→歌唱も合わせて→原曲からオーケストラも追加させて→と第ゼロ感自体も進化させながらのあの最後の無音演出。本当に編集と演出が上手すぎてもうたまりません…


ドラマパートの主題であるサバイバーズギルト(生存者の罪悪感)が素晴らしいと思いました。連載終了から、あれから10日後や他の作品を経て。現実社会でも震災や災害、悲しい事件や事故、そしてコロナ禍など様々な出来事に対して井上先生の想いが込められていたと思います。

宮城リョータの家庭は5人構成=バスケのメンバー構成と同じ。キャプテンである父親を亡くして、次のキャプテンになろうとした長男のソータも失って。ポイントガードであるリョータの成長と家族の再構築を重ねているこの見事な脚本に度肝を抜かれました。残された者たちがどう生きていくのか?生きていてよいのか?亡くなった人の代わりにはなれないのか?

バスケも強い人間がひとりいたとしてもそのチームが勝てるとは限らない。チームワークが無ければ例え個の力が強かったとしてもそのチームは優勝はできない。湘北チームが本当にチームとして一致団結していくさまと、宮城家が喪失からの再構築していくさまが巧みに重なり合った脚本でした。


ドルビーアトモス版、ドルビーシネマ版と鑑賞しましたが、まだIMAX版を観ることができていないので早急におかわりしなければ…要チェックやで…
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