それは1955年、砂漠の町とそこに集まった人達に起きた出来事についての、とびきり奇妙な舞台演劇。それは地平線の果てまで続く巨大で美しいカキワリの世界。物語の中に描かれた作家の人生、演技に込められた演者の生、どこまでが虚構か、どこまでが演技か。完成された作為。
ウェス・アンダーソン印の色鮮やかで整頓された背景と、キメキメの構図で繰り広げられる混沌のストーリー。マトリョーシカのような入れ子構造の一層(私達)と二層、二層と三層の境界線がいつしか判らなくなっていく。目覚めたければ眠れ。現実をよりよく生きるためにフィクションがあるという矜持に溢れている