Foufou

夢の涯てまでも ディレクターズカット 4K レストア版のFoufouのレビュー・感想・評価

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パリ、ベルリン、リスボン、モスクワ、北京、東京、サンフランシスコ、そしてオーストラリア。地球を文字通り股にかけた壮大なロードムービーでございます。

『グランブルー』とか『バグダッド・カフェ』なんかが流行った時代の空気を思い出します。Don’t worry, it will work out! ってどんな時にも親指立てて爽やかに笑ってね。時代もあるでしょうけど、ヴェンダースの気質ですよね、音楽をこよなく愛する、あの。拍子抜けするほどわかりやすく、どこまでも楽観的で明るい、そんな青春映画でした。見ていてなんの憂いも不安もない。五十歳になんなんとする歳でこれを撮っている。感性が若々しいと感心します(それとも……)。

1994年ですか。湾岸戦争の後ですね。世界を中東抜きでは語れない時代がもうすぐそこまで来ている。しかし映画が予言するカタストロフは人工衛星の核燃料の爆発。だからでしょうか、終末前夜なのに嘘みたいに牧歌的な時間が流れていく。不眠の夜を選んで一都市一都市ずつシークエンスを見ていってちょうどいい塩梅でございました。

視覚とテクノロジー(科学)の圧倒的優位性を語るかに見えながら、最後はロゴスと土地土地の伝統へ回帰するあたりが、ヴェンダースの人気の理由のひとつなんでしょうか。なんだかんだでアナログです。でもお話なんか口実ですね(浅い)。彼は自分の撮りたい絵を存分に撮った。そんな感じです。よくそれが許されたなぁとこれまた感心します。日本側のクルーの多さを見ても(NHKとか)、相当ジャパンマネーが流れたんじゃなかろうか。俳優陣も言わずもがな豪華。竹中直人も相変わらずはしゃいでましたし(笑)。

まぁ、そんな屁理屈はどうでも、これだけ長いと人物たちとのお別れがちょっぴり寂しいですね。
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