Fitzcarraldo

ドーナツキングのFitzcarraldoのレビュー・感想・評価

ドーナツキング(2020年製作の映画)
3.5
年間消費量が100億個のドーナツ大国アメリカにおいて、22億円の資産を築いて全米のドーナツ王となったカンボジアからの移民Ted Ngoyが掴んだアメリカンドリームを追ったドキュメンタリー作品。

監督はAlice Gu。

劇場公開中に見逃したが、BS世界のドキュメンタリーにて前編後編とに分かれて放送していたのを視聴。


「両親にとって働くことは美徳。1日も休みなし」

「体力的にキツイし休憩もなし」

「お手伝いは10歳の時から。うちの子も来年から。子供は未来の従業員なの」


子ども未来の従業員という恐ろしい考え方は…これはもう虐待レベルじゃないか?

子どもは親を選べないが、そんな親のもとには産まれたくない。子どもの人権まる無視だもんな。

これは、どこの家庭にもよくあることで…

親父が野球をずっとやってたり、野球が好きなら子供にも野球をやらせる(人が多い)、自分が甲子園に行けなかったから子どもに行ってほしいとか…子どもにはプロになってほしいとか…それは親のエゴだろ?



個人経営のドーナツ店の数はカリフォルニアでは5,000軒。そのうち9割はカンボジア系だという。


テッド
「それまでアメリカ人は、みんな白い箱を使ってました。ある時、営業マンに聞いてみたのです。ピンクの箱を作ったらどうだろう?って…その方が安いんです。10¢、20¢だろうと、塵も積もれば山となります」

いま、アメリカでドーナツといえば…みんなこのピンクの箱を思い浮かべるという。

様々なドラマやアニメに実際にピンクの箱が使われたシーンが映る。

ここに"Pulp Fiction"(1994)が登場!

Bruce Willis演じるブッチが大切な形見の金時計を部屋に取りに戻った後…信号待ちをしていると、Ving Rhames演じるマーセルスが目の前の横断歩道を渡るシーン。

これまで何ともなしに見ていたが…確かによく見るとマーセルスはピンクの箱を持っている。

これ…ドーナツだったんだ…

あんなコワモテなのに甘党なんだね。
設定が細かいわ。



テッド
「自分のドーナツ店が欲しかった。人のために一生働くのは御免でした…ある時、店のお客さんが新聞を見て言いました。テッド、この物件は買いだって!45,000$でした。1976年、私は初めて自分の店を手に入れました。ウィンチェルズと掛け持ちで働きました」


"人のために一生働くのは御免でした"

人の為に一生懸命に頑張ってる自分を振り返ると、本当に馬鹿馬鹿しく嫌な気分になる。どうせ同じ量だけ頑張るなら自分の店をと思う気持ちは至極真っ当だし自然なこと。

テッドを見習ってドーナツ王を目指すかな…

しかし、いまはドーナツ市場よりも大麻市場の方が遥かに大きいから、やるならアメリカで大麻ショップを開いた方が儲かるのは確実。




クリスティ(妻)
「夜8時から日付けが変わってもドーナツを作っていました。そのまま店が開くと午後3時頃までカウンターで接客。その後ようやく帰宅できるんです。休日なんて1日もありません」

ほんとによく働く。
この頑張り屋さんたちを騙くらかして技能実習生として搾取してるのが今の日本。

日本は日本で恐ろしい。
なんでこんなことが許されているのか?

マッチングアプリばかり開いてないで、もう少し自国や他国のことに目を向けないと…関係ないじゃ済まされないんだけど。

政治に興味を持って、クソの役にも立たないやつはキチンと落選させないと、いつまで経っても日本は浮上できない。

勘違い先進国だということに、いつ気づくのか?早く気付いてほしい。何もかも遅れていることに…。



テッド
「1979年には25店舗を保有してました」

おい!こっちは成長が早すぎる!


1979年
ジミー・カーター大統領
「世界中に難民がいて自由を求めています。歴史を振り返れば、再認識できます。我が国は、移民の国、難民の国なのだと…」

これを思い出せよ。



ウィンチェルズ・ドーナツ社長
ジェームズ・ヴァーニー
「当時の悩みは仕事を教えてあげた従業員が、お金が貯まると独立して競争相手になってしまうことでした」

40年代に西海岸の市場を独占したウィンチェルズの店舗数は今や300。カンボジア系は2,500です。


それで淘汰されていく。
いい加減な店は独立しても続かないだろう…。お金が貯まると独立して…というのは働く目的がハッキリしてていいなぁ。なんとなく働いてないところが素晴らしい。



「悪銭身につかず」

毎月毎月、何もしないでも何万ドルも入るようになると、やはり…人間はおかしくなるのか…

結局、テッドは仕事もせずによくなると、やることがなくなり、ラスベガスでギャンブル漬けに…

裸一貫で億万長者の大物となり全てを築き上げたテッドが、破産宣告で全てを失う末路になるとは…

なんだか…悲しい。

身の丈が、ちょうどでいい。

さらに…
浮気、不倫。

ついに離婚。

お互いの指先を切り
永遠に裏切らないと誓ったのに…

結局…どこにでもあるオチになるのか。

だから嫌なんだよな。
人間って欲深くて際限がないから。

こういうの見てると成功も毒薬な気がする。



食文化ジャーナリスト
グレッグ・ニコルズ
「移民1世のドーナツ店主は、成功したが故の問題を抱えています。2世は高学歴で専門知識があるので、跡取りになりたくないんです」

なるほど。1世は努力してお金をひたすら稼ぐ。その苦労をさせまいと我が子には良き教育を受けさせる。そうなると高学歴になり、継承者が途絶える。

これは面白い。
我が母も私に高学歴を望んでいたのは、同じような気持ちからだろう。自分が定時制卒で大卒との差を感じたからこそ、私にも大学だけはと口を酸っぱくして言っていたのだろう…。

今ならその気持ちは十分に分かるけどね。当時は100%で理解することは若いし難しい。さらに、そこへもっていくやり方が間違ってたと思う。人の顔を見れば勉強しろ!勉強しろ!では、勉強を嫌いになるのは致し方ない。



ドーナツ産業
2019年の収益:80億ドル超
ドーナツの年間供給数:100億個


1979年
ジミー・カーター大統領
「アメリカには世界各国からの移民に門戸を開いてきた伝統があります。我が国は世界中からの移民によってつくられたのです。私たちは元をたどれば移民です。その多様性こそがアメリカの強みなのです。いま迎えている移民が将来、多大な貢献をしてくれます。国の未来のために。彼らは才能にあふれ勤勉で自由を求めている。より良いアメリカの実現に移民が貢献するのです」

この発想をそろそろ日本もしていかないと世界に伍することはできない。
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