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県民投票のろくのレビュー・感想・評価

県民投票(2021年製作の映画)
3.0
人は人の話を聞かない。

徳田氏の考えはこうだ。原発を再稼働する/しないに関して県民投票で県民の意見をしりたい。だから県民投票をさせてほしい。

うん、そんな悪くない。少なくとも利権だらけの県議会に一石を投ずることになるはず。それに徳田氏が言っているのは「再稼働したいという意見も尊重したい」あくまで県民中心で物事を考えてみたいという意見。

でもね、人は意見を聞かないの。原発→どうせ反対左翼→話しても仕方ないって流れね。それは市井の人たちだけでないの。議員だってほんとにそう。それとも県民投票されて、仮に「原発反対!」なんて意見出てしまったらそれこそ困ってしまうから……寝た子を起こすな。でもそれって民主主義なんですか?って聞きたくなってしまう。県民の意見を「聞く」くらいはしてもいいはずなんだ。

もう最後の方で語る自民党議員の悪人顔ね。いや、なんでこんな人に投票するのって思ってしまうくらい。それは「はりぼて」あたりでも出てきたものだけど、どうも地方における「利権の巣窟」が見え隠れしてしまう。

ただこの映画を映画と見ると他のドキュメンタリーに比べれば少し弱い。原一男の映画にあってこの映画にないのは「対象への惚れこみ」だ。「君はなぜ総理大臣になれないか」なんかでもその「惚れこみ」は伝わるのに本作ではそれが薄い。だからか散漫な印象を受ける。もっと徳田氏あたりをぐっと追っかけて欲しいというのが正直なところだ。

ドキュメンタリーは確かに「何かを伝える」ものなんだけど、その前に「面白い」ものとしても撮ってほしいんだ。すくなくとも「なぜ君」や「香川一区」は圧倒的に面白いし、「はりぼて」は事実だけど笑ってしまう。「れいわ一揆」は最後の主張で涙する。でもこの映画はそれがなかった。その点では残念である。伝えたいことがあるだけにだ。
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