しちれゆ

なれのはてのしちれゆのレビュー・感想・評価

なれのはて(2021年製作の映画)
3.9
マニラの貧困地区を終の住処として生きる日本人の″困窮老人″を10年にわたり追ったドキュメンタリー。彼ら4人は皆 心の底では日本に帰りたいと願いながらも孤独に あるいは 現地妻や子供と暮らしている。この人たちは優しい。「日本の嫁さんといた頃はこんな幸せを感じたことはなかった」優しく弱いゆえに家庭という呪縛に囚われ、それを捨て、罪悪感と共に生きている。その悲惨な末路は勿論 自業自得ではある。けれどそこにはどうしてもそう歩まざるを得なかった人間の悲しみがある。これを私たち部外者が断罪するのは違うだろう。少なくともこの人たちは貧しさと病苦と死によって自分の人生に落とし前をつけた。
歯の抜けた彼らの口から出る言葉は自嘲に充ちている。自分の罪は自分が一番よく分かっているのだ。「早く死にたいなぁ。」
カトリックの国フィリピン、そこかしこに掲げられているキリストの肖像や祠のようなマリア像がとても虚しい。
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