工藤蘭丸

弟とアンドロイドと僕の工藤蘭丸のネタバレレビュー・内容・結末

弟とアンドロイドと僕(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

これは最近の日本映画にしては珍しく、観念的でやや難解な作品でしたね。それほど面白いとは思わなかったけど、一度観ただけではあんまりよく分からなかったので、2回続けて観てしまいました。

父親が若い女と浮気して家出し、母親が自殺してしまった天涯孤独な大学教授が主人公。抜群のIQを持ち、ロボット工学が専門だけど、どうやらコミュ障のようで、大学の授業もいつも板書するだけで終わりみたいな感じ。

そんな存在感の薄いキャラクターだけど、彼自身も自分が存在しているという実感がなく、特に右足は全く存在していないかのようにコントロールが効かなくなって、ケンケンで歩かざるを得なくなるような発作を起こすこともある。

彼は父親に対する恨みを募らせ、殺したいと思っているんだけど、自分自身で手を下す勇気はなく、自らの分身である自分にそっくりのアンドロイドを製作し、彼に殺させようとする計画を練っている。父は死の病床にあって長くない命ながら、アンドロイドが完成するまで、医者に延命措置を施してもらうほどの執念。

ところが、ようやくアンドロイドが完成して、計画を遂行しようとする前夜に、腹違いの弟が訪ねて来て、アンドロイドを殺してしまう。それで彼も逆上し、結局自らの手で弟を殺してしまうことになる。

しかし、父親はとうとう命が尽きて殺すことは出来ず、悔しさのあまり飲めない酒を大量に飲んで、道端で寝ていて凍死してしまうという話でした。

だけど、これはリアルな話というよりも観念的なものでしょうかね。いつも大量の雨が降っているという状況も現実にはあり得ないことで、これは心象風景を表したものかも知れません。謎の少女の意味は、いまいち良く分からなかったけど、もしかしたら母親の象徴として描かれていたのかも知れませんね。

本作は、阪本順治監督の私小説的な作品ということだったけど、個人的には昔よく読んでいた安部公房の小説を思い出したりもしました。