ぼのご

ダンサー・イン・ザ・ダーク 4Kデジタルリマスター版のぼのごのネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

ビョークは中学生の頃から好きでサントラは何度も聴いていたけど、映画は観ていなかった(胸糞映画として有名みたいだから、観る勇気がなかなか出なかった…!)。でも今回リマスターで公開されて観に行って、好きな音楽を劇場で聴けたことだけでも嬉しかった。

救いの無い話だってかなり覚悟して観たからか、思ったほど鬱にはならなかった。それでも泣いちゃったけど。感動したとか同情したとかとはちょっと違って、登場人物の感情の動きや出来事が悲惨だったから。
悪い人は基本いない筈なのに、セルマがどんどん不幸になっていく。圧倒的元凶のビルは間違いなくどうしようもないクズなんだけど、彼ですら悪人って感じがしない。実際そんなもんかもなとも思うけど、それがセルマの話を大多数の人が信じてくれない要因にもなっていて、クズはわかりやすくクズでいてくれよってすごく思った。一人の馬鹿のせいで何もかもめちゃくちゃになってしまう怖さも感じる。

セルマは酷い状況下でもビルを許そうとしたり、法廷でも沈黙の約束を守ったり、息子を動揺させない為に真実を話さなかったりして最悪の結末に向かっていく。
不器用過ぎるし、ああいう対応をしていれば状況が悪化するのは当然かもしれないけど、死刑判決を受ける程の悪いことは一切していないんだからやるせない。それにこちら側からしたらもどかしくもあるけど、自分がセルマだったらって考えると気持ちはわかるな。それにきっと、どういう対応が正しいのかなんてわからなくなる。

一応救いもなくはなくて、最期までセルマの横に寄り添ってくれた看守の人とか、キャシーやジェフみたいに味方でいてくれる人がいたのは良かった。あと、キャシーが最期に監視を振り払って息子のジーンの眼鏡を握らせてくれたこととか…。
でもそういういい人たちほど無力なのが切なかった。キャシーはセルマの弁護士費用を出せるほど裕福じゃないから、セルマが自分が失明するのを放ってまで息子の眼の手術費として貯めていたお金をあてようとして衝突する。ジェフも基本親切だけど「失明が遺伝するとわかっていて何故産んだんだ」って質問は最低だったし、人の勝手を責めるような物言いする割にはセルマに対する愛情が一方的で、ストーカー紛いになってるし。

人間ってなんでこんなに複雑なことになっちゃうんだろう。ただのんびり生きるだけって出来ないのかなぁ。
『i've seen it all 』での「もう見たいものなんてないの」って歌詞が突き刺さる。セルマにいつも感情移入したわけではないけど、つらい時に周りにある情報を取り入れて空想する場面は特に共感出来たし好きだった。
賛否両論あるし安易に人にお勧め出来る映画ではないと思うけど、僕はとりあえず観れて良かったかな。
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