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悪魔館 死霊のせいなら、有罪。のkitoのレビュー・感想・評価

3.5
なーんだ、普通に、いや、平均以上にけっこう面白かった。

悪魔館 死霊のせいなら、有罪。(2020年)
死霊館 悪魔のせいなら、無罪。(2021年)

国内配給会社が確信犯で100%パクった邦題を付けている。マイナーなカナダ映画なので、そうでもしないことには手に取ってすらもらえそうにない、という危機感が読み取れる。間違えて手に取るか、異なる作品だとわかったうえで好奇心から見る人の数と、ちゃんとした異色ホラーだと宣伝広告した結果、予想される興行収入を天秤にかけたのだろう。まあ、費用対効果を考えるとこういう手法もやむなしか。

しかし、そんな炎上商法が残念なくらい、ちゃんとした異色サスペンスホラーだった。

交通事故で亡くなった孫を悪魔の力で生きかえらせようとする老夫婦のお話。妻が主導権を握り(それにはちゃんと理由がある)、産婦人科医の夫は最愛の妻に協力して、悪魔召喚のために妊婦を拉致ってしまう。医師といういかにもハイソらしい品が良く知的レベルの高そうな夫婦がオープニング早々、大きな宅配便を受け取るかのように協力し合って妊婦を拉致る。

夫婦は綿密な計画を練って拉致監禁こそするものの、誰も殺傷はしない。しかし、悪魔召喚の儀式により怪異が起こり始め、人が死に、舞台となる夫婦の家は次第にさながらお化け屋敷と化していく。

妊婦が監禁されている二階が表舞台で一階がお化け屋敷のバックヤードのようで、一晩中、二階に上がってきては一階にはけて行くお化けがいたりして、そこはつい笑ってしまった。

愛する家族を失った喪失感はスティーブン・キングの「ペットセメタリー」に通じるものがある。全編、静かなムードの中で話が進み、時折、時制を遡る描き方は完全に”監禁もの”のそれで、いったいこの妊婦さんはどうなってしまうのだろうかとハラハラするサスペンス感が良い。何の非もない妊婦さんにとっては、犯人夫婦と悪魔という最悪な四面楚歌状態なのが本当に可哀想。

パクり邦題も含めて異色で面白い一本だった。そして、観終わってみると、苦肉の策とはいえ意外に内容とマッチしたセンスの良い⁈パクり邦題だと変に納得してしまった。
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