CHEBUNBUN

クレーン・ランタンのCHEBUNBUNのネタバレレビュー・内容・結末

クレーン・ランタン(2021年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

【ヒラル・バイダロフ物語らない】
昨年、第21回東京フィルメックスでアゼルバイジャン映画『死ぬ間際』が最優秀賞を受賞した。本作を手掛けたヒラル・バイダロフの新作が第34回東京国際映画祭コンペティション部門に選出された。『死ぬ間際』が大傑作だったので期待していたのだが、結果は大いなる失望に終わった。※結末に触れているネタバレ記事なので注意

アゼルバイジャンの荒涼とした風景は映画映えするだろう。『死ぬ間際』では、死の重力を宿した男の逃避行が、ロケーションの妙と絡み合い魅力的な映画に仕上がっていた。しかし、それで味をしめたのだろうか?彼は物語ることを放棄してしまった。法学生が4人もの女性を誘拐した男と対話をする。男が語る内なる世界をアゼルバイジャンのドライな風景を背に、断片的に描かれる。

「俺は人間 そのことに奇妙さは覚えない」
「俺は人間 そのことに奇妙さは覚えない」
「俺は人間 そのことに奇妙さは覚えない」


と男の詩が反復され、心の中の苦しみ。真実を隠そうとし生まれる迷宮が、黄金に反射する水や暗闇、深緑の世界から創造されていく。ヒラル・バイダロフは「どうだ、綺麗だろ?詩的だろ?」と言いたげだが、美的センスに胡座を描いておりドラマがない。

残念ながら、日本のアニメではとっくにそのような心象世界描写の演出技法は確立されており、『涼宮ハルヒの消失』や『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』、『Sonny Boy』などで非現実的な不気味な世界の中で自問自答しながら積極的にドラマに関わっていく。故に、美しい映像だけで簡単に両手挙げて喜べないのだ。

最後に、エヴァに乗ります!みたいなテンションで「私は軍隊に入ります」と言って終わるエンディングもあまりにも乱暴で評価できませんでした。

東京国際映画祭恒例の、遅刻者続出で、通路の中に突っ立っている人のせいで字幕が見えなかったり、「スマホの明かりを消せよ!」と声を荒げる者も現れ殺伐とした環境で観たのもあり、あまり楽しめなかった。正直、地を這ってでも上映時間に間に合って欲しい。例え遅れたとしても、華麗に自分の座席に座って欲しい。本当に困るしムカつきます。
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