原題『マイスモールランド』 (2022)
監督・脚本 : 川和田恵真
撮影 : 四宮秀俊
編集 : 普嶋信一
音楽 : ROTH BART BARON
出演 : 嵐莉菜、奥平大兼、アラシ・カーフィザデー、平泉成、他
埼玉県川口市を舞台に、幼い頃から日本で暮らしてきたクルド人の女子高校生が、難民申請が認められず、在留資格を失い、ある少年との出会いを通して悩みながらも成長していく姿を描く社会派ヒューマンドラマ映画。
「アイデンティティ」映画。
是枝裕和が率いる映像制作者集団「分福」に所属する川和田恵真による長編商業映画デビュー作。
在留資格を失い、自由な移動も働くこともできなくなった在日クルド人一家の姿を通じ、本当に保護を必要としている人々までをも閉め出してしまう現状の難民認定制度の問題点を浮き彫りにした作品。
社会派ドラマ映画として、充分な存在意義とメッセージがしっかり伝わる作品ながら、移民・難民の"裏"の側面を描いてないのでテーマが立体的に浮かび上がらず、制作費がそれ程ない低予算作品なので仕方ないかもしれませんが、全体的に「映画」としての画作りが、やや凡庸だったかな…
しかし、冒頭のバスで、ただ立って乗っているだけなのに日本における社会的立場をサラっと感じさせたり、東京と埼玉の川を跨ぐ橋を国境線と見立てていたり、後半の「ロビン君が作った箱庭のような手作りジオラマ」で本作のタイトル「マイスモールランド」を映像で語ってみせるなどの巧い演出や洗面所でのサーリャ演じる嵐莉菜の強い眼差しと表情は哀しみと意志の強さと希望を感じさせるシーンはグッと来ましたし、観る者にしっかり伝えたい今の日本社会への問題提起、印象的なシーンもちゃんとある良作かつ重要作であることは間違いない一作だと思います。
