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ブローカーたちのbackpackerのレビュー・感想・評価

ブローカーたち(2021年製作の映画)
4.0
第34回 東京国際映画祭 鑑賞14作目

2021年のTIFFで鑑賞したフィリピン映画その3。軒並みダークな雰囲気の作品ばかりでしたが、想像の容易さ(共感性)、現実感の強さ、無常感・非道ぶりはトップクラス!

ーーー【あらすじ】ーーー
区議長の息子マイクは、不動産業者の新人営業マン。
ある日、富裕層向けコンドミニアム(日本風に言えば高級タワーマンション)建設用地6ヘクタールの確保依頼が舞い込む。
用地買収の候補地は、700世帯が不法占拠する難ありエリア。
昔馴染みのじゃじゃ馬娘ジェスと地域住民及び不法占拠者達との交渉に臨むマイクだったが、深い溝は埋まる事なく、対立が激化していく……。
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今回のTIFFで描かれたフィリピンの姿は、貧富の差による残酷な現実をありありと見せつけるものばかりで、明るさなんて微塵もないような陰惨さがありました。
本作の主人公マイク・サンチェスも、気だるげな表情、無味乾燥な眼差し、常に決して熱の篭らない面立ちと、実に暗い。
その無気力にも映るダウナーさからは、不動産ビジネスの暗黒面から湧き上がる邪な力を感じさせます。

経済格差、絶対的貧困、政治腐敗、外国資本の蹂躙という、非常に社会派な問題に切り込んだ作品で、ドキュメンタリー映画好きなタイプにはオススメできますが、見る人を選ぶので万人ウケはしないでしょう。
それでも、行くところまで行ったマイクの背中には、漲る自信も、金と権力への渇望も、およそ陽気な活力はまるで感じさせず、ただ淡々とあるがまま沈んでいく虚しさがあり、私はとても好きでした。
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