ソリ

イニシェリン島の精霊のソリのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
5.0
🚨ネタバレ満載

原題:イニシェリン島のバンシー
(バンシー=アイルランド・スコットランドに伝わる女妖精🇮🇪🏴󠁧󠁢󠁳󠁣󠁴󠁿
ちなみに『ハリポタ秘密の部屋』にも
"Break with the Banshee”という本が登場する)

スコア10つけたい⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

①イ・ジュニョクしがインタビューで言及
②アイルランドが舞台🇮🇪
③名優2人の共演
(ブレンダン・グリーソンは『ハリポタ』のムーディ❤️)

ってことで絶対観ようと思ってた今作。

綺麗なアイルランドの島の景色と俳優の名演に癒されよう〜🎵
と何も知らずに軽い気持ちで観始めたんだけど・・・

雷に打たれたような衝撃。途中から
(あたしが今まで観てきた映画はなんやったんや...?)
って思いながら観てたレベル。

前半はユニークなセリフの応酬が面白くてげらげら笑って楽しんでたんだけど、後半の展開には驚き通し。
こんなに(観た人と語りたい!)と思った映画
今まであったっけ?????????

普段は映画観ながら他のことするの大嫌いなんだけど、
今作に関しては心に響くシーン・セリフが多すぎて、
何回も停めながらスマホにメモしてた📝📱

何も知らずに観たけど蓋を開けたら賞獲りまくってるし
なんと『スリー・ビルボード』の監督だった!!!!
そりゃ面白いわ!!!!!!!!!!!笑

(ポエム挟みます)
今こんなに素晴らしい映画に出会えてよかった。
というのも、ここ最近韓ドラにしろ洋画にしろ
(まぁ観てて普通に面白いな〜)って作品がほとんどだったんだよね。ここのスコアで言うと⭐️3〜⭐️4的な。無難な作品と言うか。
⭐️5の作品にももちろんたくさん出会えたけど、
あくまで"実話が元の社会派作品" "エンタメ映画としての面白さ" "自分にどハマりなユーモア"
って感じで、内容そのもの・脚本・展開に強く引き込まれた作品ってそれこそ3年前に観た『スリー・ビルボード』が最後だったような気がする。
韓ドラも(脚本、途中まで超良かったのに後半失速したから総合満足度落ちたな...)ってパターンが多すぎるし...

あまりにも(可もなく不可もなく普通に面白いな〜)って感じてばかりなもんだから、
ひょっとして自分の感性が鈍ってきたのかな、
好きなはずの映画・ドラマに本当は興味が持てなくなってきたのかな って危惧してたんだよね。

だから久しぶりにこんなに心が動いて安心した!
何事も然るべきタイミングで出会えるんだな。

事前に監督知らなくて正解だったかも。
『スリー・ビルボード』の監督と知ってたらただごとじゃない映画なの確定で心の準備できちゃうから🤣
ヒーリング映画かと思って観てたらとんでもない作品だった、っていうびっくりが今回の醍醐味なので😂


期待通りアイルランドの雄大な自然が素晴らしかった✨
大自然をバックに流れるアイルランド音楽で
オープニングからもう好きだった。

映画の内容は、一言で言うとおじさん同士の喧嘩。

でも実は⬇️
監督
「(現代の話にしたくなかった)
彼ら2人の諍いはアイルランド内戦の両勢力を暗喩している
この物語は大きな戦争の隣で起こる小さな2人の男の小さな戦争」

コリン・ファレル
「語られるテーマは 信義と友情 別れと孤独 寂しさと死と嘆き それに暴力 とても人間的なテーマだ」

おじさん同士の喧嘩からあそこまでヒューマンドラマに膨らませられるのさすがマクドナー監督。


私がとにかく衝撃を受けたのはコルムが実際に指を切ってしまったこと。
(・・・え?本当に切るの??夢であって・・・)
びっくりしすぎてそこから空気変わった。

(でも後から考えたらブレンダン・グリーソンだから
それくらいのことはするかwwww)

ただそれでもコルムに絡むのを辞めないパードリック。
考察の中に「自分自身が発達障害者なんだけど、
コルムにつきまとうのを辞めないパードリックは
まるで幼い時の自分みたいできつかった」
というものがあり、ひょっとするとパードリックにそういう要素がある可能性も無きにしも非ず。
というか1クラスに2人はいるって言われてるくらいだから全く珍しくないしね。
パードリック目線で映画を観てるからあまり分からなかったけど、よくよく考えたら、
常に周りに人がいるコルムと違ってパードリックにはそういう人がいなかったし、暴力警官にも店の女主人にもバカにされてたし、パブの店長たちも話してはくれるけど必要最低限の挨拶、返事って感じだったもんな。話も退屈と。一番の問題は自分の話に相手が退屈してることに気付かなかったことだろうけど。
特典映像で監督は全く明言してなかったけど、
ドミニクは完全にそうだし、何か"浮いてしまう人"を
描こうとしてたのかな。

アイルランド内戦の暗喩らしいから、
それこそ内戦のこと詳しく知ってればもっと深掘りできたかもしれないㅠㅠ


コルムが指を切ったのは、ゴッホの「耳切り事件」を
連想させた。同じ芸術家だし。

ジュニョクしの解釈によると、コルムは曲を作りながらも自分に自信がなかったと。

指がなくなって楽器を弾けなくなるのはむしろ好都合だったのかな🎻
むしろパードリックの性格なら話しかけてくるの辞めないだろうと分かっててあんな宣言したのかも、と思った。
曲作りをやめる口実に、友達のいないパードリックが利用されたのかな。

といろいろ考えたけど、(本当に精神の病気なのでは)
と思いながら観てた😅
じゃないと普通指は切らない。
となると'精神に問題がある人' はパードリックとドミニクだけじゃなくコルムも ということになるね!

指切ってしまうあたりコルムが一番やばいな。
あ、でもパードリックも放火しちゃうし...(皆やばい)


そしてさらなる衝撃、ジェニーの死🫏😭😭😭😭😭

私もすっかり愛着を持ってたからただただ哀しかった。
コルムが間接的にジェニーを殺したんだよ・・・

でもそれに対して心から謝るコルム。
パードリックが警官に殴られた時も優しくしてあげてたし、イカれてるけど本質的な優しさは変わらない。
動物愛だけは不動の2人。


終始下がり眉のコリン・ファレル可愛かったし
誠実さと知性とユーモアを併せ持ったケリー・コンドン本当に素敵だった💓


以下は鑑賞時のメモ せっかくなので加筆しそのままレビューへ

・キルデア!
ドラマ『デリー・ガールズ』で知った地名😆🇮🇪

・ドミニクと話してる間も、コルムに拒否されたこと考えてるパードリック。表情が切ない。
コリン・ファレル良い演技するなぁ

・鈴の音がしたから玄関開けたのか🛎️🫏
あの音が聞こえたらジェニーが入りたがってるってことだと分かるのね。日常が見えた。いいね。

・会話がキュート😂真剣に言い合いしながらもツッコミが😂
「ロバじゃなくて馬のクソ」

・「この島で、退屈以外の何を求めてるの?」

・「誰が死刑に?」
「IRAの連中だと聞いた いや自由国側か?どっちがどっちか
昔は敵と言えばイギリス人だった 単純でよかった」

死刑執行さえ見れれば思想は関係なしの警官

・パブでの応酬👏🏻

「二番は」 「バイオリン弾きだ🎻」吹いた🤣wwwww


「17世紀に優しさで知られた男の名を知ってるか?」
「誰だ?」
「誰も覚えてない。
だがモーツァルトの音楽は今も知られてる」

「今までで一番面白かったのに」

パードリック、ベートーヴェンも分からないのか
そういうとこもコルムが離れたがった原因なのかも

「言っとくけどモーツァルトは18世紀の作曲家よ」
スカッとー!!!!!!!!!!!シボーン最高

・電報の嘘はやばい。コルムと付き合ってるから嫉妬したんだろうな
ドミニクすらドン引き😅

・コルムの犬・・・😭
またご主人が同じことしたらダメだと思ってハサミを遠ざけたんだよね😭😭
こういうとこも描写天才すぎだよこの映画😭😭

・シボーンへの手紙のジェニー要素切なすぎた
死んだと伝えない
まだそこにいるかのようにジェニーを嗜めるような言葉まで😭😭😭😭😭🫏
あああ監督天才😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭


そしてディズニープラスはなんとメイキングと
未公開シーン集まで配信してくれてます、神。
映画ファンの味方すぎ。

以下メイキングメモ。監督の発言深すぎ。

監督「現代の話にしたくなかった
彼ら2人の諍いは アイルランド内戦の両勢力を暗喩している
この物語は大きな戦争の隣で起こる小さな2人の男の小さな戦争」

コンドン「島民は本土の戦争を他人事だと思っている」

監督「島で暮らすと視野が狭くなる
顔なじみとの変わらぬ暮らしが毎日続く
だからこそ平穏な日常に綻びが生じたときの影響が大きい」

撮影はイニシュモア島(アイルランド人にとって神話と文学の島🇮🇪)
対岸にはゴールウェイ😻
エド・シーランの『Galway Girl』のゴールウェイ💚

監督「芸術家の生き方が問われている
人生を捧げているか
創作のためなら人を傷つけていいのか
映画の中に答えはないし 私も答えを出せていない
脚本家や監督として常に自らに問う
"旅行やサッカー観戦は時間の無駄なのでは?"と」

コロナの影響で撮影が延期。
撮影監督・プロダクションデザイナーとゴールウェイの一軒家で過ごし、一年かけて全てのシーンと絵コンテを見直し、どうすれば映画的になるか検討した。

監督「小説を再読するように何度も見たい」
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