すずや

ウーマン・トーキング 私たちの選択のすずやのレビュー・感想・評価

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女性に声がない社会構造、その権力と抵抗のお話。
まず、問題を認識するには"それが問題である"という言葉と、その問題において自分が弱い立場に置かれているという自己認識が必要で、そのスタートラインに立つことすら彼女たちにはままならないことが冒頭描かれていたのがすごく良かった。あと、この問題が男女だからという理由だけで起きているわけではなく、支配欲がもたらしているものだという指摘もよかった。オーガストが「お前は黙ってろ」って言われるシーンが好きで…あのシーンによって、彼女たちも抑圧の立場に立ってしまうこと、オーガストが彼女たちの立場に立ったこと、の両面が描かれていたのが印象に残っている。
しかし、どこまで話が進んだとしても、彼らの考えや思いの拠り所がキリスト教と赦しであることには変わりなく、自らの尊厳を語る時にも、自らの尊厳を奪っているシステムによってしか具体的には考えられないのが、どうにもやるせないなあ…と思ってしまった。オーガストのように、学ぶことによってこのシステムからの脱出を図る以外、根本的な社会構造は何も変わらないんだろうな…って思わずにはいられなかった。
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