2019年の「逃亡犯条例改正案」から、2020年の「国家安全維持法」まで。香港で大きなムーブメントになった市民運動が、やがて鎮火し、静まりかえっていくまでを描いた、胸の痛くなるドキュメント。
この作品、香港と中国では上映もできないばかりか、タイトルを口にしただけで逮捕される可能性があるとのこと。カンヌで上映後、台湾や日本をはじめとする海外では順次公開されている。
基本的に、デモ隊と警察(機動隊)の衝突をえんえんと描いているだけなので、ある程度の事前知識がないと、観ていてツラく退屈になってしまうかもしれない。
自分はまぁまぁの香港迷(香港マニア)で、雨傘革命以降のいちおうの歴史的背景はあたまに入っており、なおかつ当時YouTubeやSNSの類いにかじりついてなりゆきを見守っていたクチなのだが、それでも2時間38分はいくらなんでも長過ぎると感じた。
デモ参加者たちをヒロイックに描き過ぎている面はあるし、俯瞰的で冷静な目線(たとえば、市民が「逃亡犯条例」にあれほど過激な反応をしなければ、「国安法」成立という最悪な結末は避けられたのではないか?など)も足りないような気はした。
にしてもである。これだけひとつの事件を、当事者に近い立場から、もしくはまさに当事者自身のスマホから、包括的にエモーショナルに描いたドキュメンタリーはかつてないのでは?
後世に遺すための(文字どおり)ドキュメントの意味合いでのドキュメンタリーとしては、出色の出来だと言っていいと思う。
なおエンドロール後に、監督から日本の観客に向けたメッセージがあります。