松原慶太

時代革命の松原慶太のレビュー・感想・評価

時代革命(2021年製作の映画)
4.0
2019年の「逃亡犯条例改正案」から、2020年の「国家安全維持法」まで。香港で大きなムーブメントになった市民運動が、やがて鎮火し、静まりかえっていくまでを描いた、胸の痛くなるドキュメント。

この作品、香港と中国では上映もできないばかりか、タイトルを口にしただけで逮捕される可能性があるとのこと。カンヌで上映後、台湾や日本をはじめとする海外では順次公開されている。

基本的に、デモ隊と警察(機動隊)の衝突をえんえんと描いているだけなので、ある程度の事前知識がないと、観ていてツラく退屈になってしまうかもしれない。

自分はまぁまぁの香港迷(香港マニア)で、雨傘革命以降のいちおうの歴史的背景はあたまに入っており、なおかつ当時YouTubeやSNSの類いにかじりついてなりゆきを見守っていたクチなのだが、それでも2時間38分はいくらなんでも長過ぎると感じた。

デモ参加者たちをヒロイックに描き過ぎている面はあるし、俯瞰的で冷静な目線(たとえば、市民が「逃亡犯条例」にあれほど過激な反応をしなければ、「国安法」成立という最悪な結末は避けられたのではないか?など)も足りないような気はした。

にしてもである。これだけひとつの事件を、当事者に近い立場から、もしくはまさに当事者自身のスマホから、包括的にエモーショナルに描いたドキュメンタリーはかつてないのでは?

後世に遺すための(文字どおり)ドキュメントの意味合いでのドキュメンタリーとしては、出色の出来だと言っていいと思う。

なおエンドロール後に、監督から日本の観客に向けたメッセージがあります。
松原慶太

松原慶太