1303さんの映画レビュー・感想・評価

1303

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マッドマックス:フュリオサ(2024年製作の映画)

4.0

間断なく降り注ぐ猛火と噴煙の中で一瞬も曇らない彼女の瞳に只管圧倒されます。
相変わらず粗暴で無秩序で混沌とした世界観と想像の斜め上をいく世紀末ガジェットの数々に口角が上がりっぱなしでした。

追記
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関心領域(2023年製作の映画)

4.0

美しい家屋に剪定された庭 .. 完璧な日常と壁一枚隔てた向こうから微かに聴こえる怒号と悲鳴。毎日の生活音に掻き消されていた凄惨な現実を咽喉元に押し込まれた気がしました。

39 刑法第三十九条(1999年製作の映画)

3.8

心神喪失による犯罪は精神疾患として法的な庇護の元罰されないという刑法を巡る作品。一夜の事件の真相が明らかになるにつれ、目を背けたくなるようなある過去の惨劇が輪郭を現す .. 劇中のある人物が法の欠陥を>>続きを読む

ある男(2022年製作の映画)

3.5

家族、恋人、同僚、友人、名前、住所、学職歴、年齢 .. 環境や情報その全てがいかにか細く脆弱で、そして奇跡的な均衡で自己を形成しているのか改めて教えられた気がしました。ポストクレジットシーンが個人的に>>続きを読む

異人たち(2023年製作の映画)

3.6

閑居の中の静謐な孤独とその奥にある精神的な損傷を癒すゴーストストーリー。
抑揚を抑えた穏やかなヒューマンドラマから徐々にサイコホラーに傾れ込む諧調の変化がスリリングです。軈て辿り着く終着点は一種のセラ
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プリシラ(2023年製作の映画)

3.8

胃凭れするような甘い運命で結ばれた、誰もが羨む優越と誰も知らない憂鬱を描く排他的な物語。なのかなと思っていましたが恋焦がれ思い悩みやがて自分の手で未来を選び取る、時代も性別も超えた普遍性を持った作品で>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

3.8

会話の余白や表情の機微で繊細に交わされる感情の切れ端。
普遍的な主題を丁寧に描く硝子細工のような演出に見惚れる一方で、運命に陶酔した2人(主に彼女)の恣意的な振る舞いに対する嫌悪感 .. 最後はある人
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.0

20世紀における叡智の結晶であり史上最悪の殺戮兵器が生み出された経緯と顛末を個人史として小さく淡々と呆気なく描いた点が印象的でした。
1945年8月に彼が電話で得た情報は今の観客のそれとほぼ同じで、そ
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

4.0

ひたすら翻弄され凄惨な事態を受動するだけだった前作から一夜明け、覚醒と黎明を描く第2部。
後の展開を予感させる表情や視線を切取る画面構成、関係性を示唆するレンブラントのような照明設計などなど本当に綺麗
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.9

雪に囲まれた山荘。中央に据えられた真実を隠すように漂う霧と思わぬ角度から視界が開ける構成、拠り所としていた視点の持ち主も信頼できない語り手だと判る展開を含め終始目が離せませんでした。真相を示唆したまま>>続きを読む

ボーはおそれている(2023年製作の映画)

4.0

不条理で凄惨で少し優しくグロテスクで馬鹿馬鹿しい、人生そのものを圧縮したような3時間。
ラストシーンの構図と顛末を見ていてぼんやりSNSを具現化したらこんな感じなのかなと思いました。

M3GAN/ミーガン(2023年製作の映画)

3.6

人と同期しケアする事を目的に生まれたAIトイに、環境や情報を処理・咀嚼し成長する機能を搭載する事で敵意や悪意を覚え、やがて破滅ヘ向かう展開は哀しくとても興味深いです。
想い守ることが最優先される=脅威
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.2

想像し得る最もグロテスクな設定とその禁じ手で描き得る最も綺麗なストーリーライン。人生の愉悦と懊悩は同じ身体で2度摂取するには明らかにカロリーオーバーだなと思いました。

はなればなれに(1964年製作の映画)

3.8

稚拙で浅はかな動機に軽快な会話、(軈て訪れる)悲劇的な展開にメタフィクショナルな演出 .. 未だに見た事のない独特なバランスで、映画というプラットホームの在り方を更新するような発想やエネルギーが溢れて>>続きを読む

ビューティフル・マインド(2001年製作の映画)

3.6

統合失調症を患いながらノーベル経済学賞を受賞したジョン・ナッシュの半生を綴る物語。
承認欲求や功名心から次第に精神的なバランスを崩してゆく痛々しさに目を背けたくなりますが、人間の本質は献身や利他にある
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Saltburn(2023年製作の映画)

4.0

属性を逆手に取った狡猾な手段で特権を簒奪する話なのかと思っていたら想像より込み入った感情を巡る抒情詩のような作品でした。
古典的な画作りとポップなタイポグラフィ、劇伴のコントラストなど上質なのに毳毳し
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市子(2023年製作の映画)

3.8

不可解な失踪を追う中で彼女を囲む視点から立体的に真相が明かされてゆくミステリー。痛々しく凄惨な過去とそれを知った所で糾弾も断罪も出来ない今。家族も居場所も名前も見失ってなお残る自分とは何なんだと問われ>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

3.9

過酷な現実に諦観でも失望でもなく会話とユーモアで応える らしさ に溢れた作品でした。同じ型の鋳物でその上壊れていても大切な人のために変わる姿は格好良いし愛おしいです。

カード・カウンター(2021年製作の映画)

3.9

静かな習慣と反復。その奥にある偏執的な癖や凄惨な過去の痛々しさにとても惹かれます。少し窮屈なアスペクト比から始まり色彩設計もレイアウトも全て美しく終始見惚れました。高い美意識に貫かれた佳作です。

ザ・キラー(2023年製作の映画)

3.9

習慣と秩序を重んじる主人公のある致命的なミスを発端に始まる逆ギレリベンジ。
ルーティンワークとして描かれる暗殺稼業の面白さに加え、倫理ではなく不条理な世界の規律に従った正義に痺れます。
トレント・レズ
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ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)

3.8

独特な言語体系や命名感覚、刷新的なガジェットデザイン、壮大なランドスケープに暗喩的なストーリーライン .. どれも期待以上でしたが特にSF映画史に残る美しく切ないエンディングは圧巻です。
疑問や謎もあ
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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

4.0

花殺しの月の頃と呼ばれる20世紀初頭の米国史の顛末を描いたサスペンス。
権益を巡る悪辣な事件を軸に展開されるのですが、倫理観や種族など凡ゆる点で境界線上にある主観、深層にある真意と表層上の会話の不一致
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アアルト(2020年製作の映画)

3.8

アルヴァとアイノ。夫婦の間で交わされた手紙を中心に据えながら手掛けた作品や時代背景を追ったドキュメンタリー。
機能と装飾、制約と自由という相反する要素や概念を矛盾なく形にする独創性 .. iittal
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イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)

4.2

舞台説明や人物配置を通して漂い始める不穏な空気と並行して昂まる期待感。よく移動し、よく吠え、よく眠る今作の小悪党側からすると割に合わない大虐殺ですが、正義はこちらにあるので仕方ありません。109分間ず>>続きを読む

TAR/ター(2022年製作の映画)

3.8

一個人のパーソナリティについての物語であり世界の構造の話でもあると感じました。一元的に統制しようとする彼女とその美しく歪んだ理想の軋轢は現代社会が抱える問題そのものです。完璧な世界というのは勘違いした>>続きを読む

コントロール(2007年製作の映画)

3.6

制御不能な心身と自己矛盾に苛まれながらもその混沌を高い純度で吐き出し続けた代償の大きさに絶望します。鬱屈とした詩世界と退廃的な音像、またその奥に仄かに灯る美しいメロディは呪いでも希望でもあるように感じ>>続きを読む

24アワー・パーティ・ピープル(2002年製作の映画)

2.8

その後の世界の音像を変えるマッドチェスター黎明期、セックスピストルズから端を発してファクトリーレコードやハシエンダを囲るシーン全体をモキュメンタリックに描く不思議なバランスが面白いです。音楽史に残る悲>>続きを読む

リズと青い鳥(2018年製作の映画)

3.8

架空の童話をトレースしながら他者と自身を理解していく内省的なストーリーは地味で単調に感じられますが、教室のカーテンの揺れや管楽器に反射する光、廊下に落ちる影や風に膨らむシーツ .. を媒介した繊細で豊>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

4.0

架空の時空間を前提としていた前作と異なり、きちんと設定された舞台の時代精神を司るキャラクター達によるスラップスティックコメディ。またその中の観念的な会話を相対化するある大きな仕掛けが今作の独特な魅力と>>続きを読む

バービー(2023年製作の映画)

3.8

軽快でポップな感触に反して本質を捉え切れない複雑な構造が印象的です。
フェミやマチズモ .. 古典的なバイアスを目一杯詰込みながらそのどこにも寄り添わない居心地の悪さ=定義することや結論付けることを否
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CLOSE/クロース(2022年製作の映画)

3.9

名前の付けられない感情や説明の出来ない関係 .. その全てが永遠にそのままでいられない(自分を含めた)社会という単位に改めて辟易します。
小さくか細い体から溢れそうな混沌に翻弄される二人を目で追いなが
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ラストエンペラー/オリジナル全長版(1987年製作の映画)

4.0

清朝最後、満州国初代皇帝 愛新覚羅溥儀の生涯を虚実織交ぜ描いた叙事詩。
実際の故宮を使った荘厳で絢爛な舞台そのものが軈て来る着地への布石にもなっていたりと巧みな演出に涙腺が刺激されます。
歴史の中心に
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Pearl パール(2022年製作の映画)

4.2

風船を針で嬲るような序盤を経てある一点で破裂する世界。最悪で最高な展開に釘付けになります。
どのシーンも狂気のメーターが激しく振れるほど美しく、吐き気と感動が同時に押し寄せる名作でした。
前作でありそ
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X エックス(2022年製作の映画)

3.6

死と性を対比させながら人生が閉じてゆく悲哀とやがてそこに至る絶望の予感みたいなものに溺れそうになります。ただ高尚なメッセージに帰着しそうになると悪趣味なゴア描写や俗っぽい演出で楽しませてくれるバランス>>続きを読む

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

4.5

時代や媒体を超え何度も語られたスパイダーマンという物語が孕む業自体に抗うメタストーリー。
グリッチノイズによる軋轢や反重力的なカメラワークなど発明的な映像表現にわくわくどきどきしていたら一瞬で終わりま
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怪物(2023年製作の映画)

4.0

断片的に積み上がるシーンを眺めながら、初めはバイアスを利用した示唆的な演出なのかなと思って観ていると次の瞬間、視点が切替ることで別の誰かによる明白な嘘の存在に気が付くという構造が興味深いです。
次第に
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