光好尊さんの映画レビュー・感想・評価

光好尊

光好尊

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

3.9

SFとアクション、コメディ(B級)が絶妙に混ざり合う一見ヘンテコ映画。本作は相当にデフォルメされているとはいえ、マルチバース自体は現代物理学で真剣に議論されている話題の一つ。

量子力学によれば、ミク
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(2020年製作の映画)

3.9

人生は、さまざまな出来事をどのように意味づけするかで決まる。つまらない日常も特別な出会いもクソみたいな職場も楽しい飲みの場も、すべては人生において自分がどのように意味づけているかだ。

怪物(2023年製作の映画)

4.5

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是枝監督のほぼ一貫したモチーフは、宮台真司の言葉で言えば、「法(法律/社会/システム/ルール/規範/作法/損得/計算等)」と「法外」と言える。

約1万年前の定住社会を経た約5千年前の大規模定住社会以
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母性(2022年製作の映画)

3.9

素朴に言って、家族というものの嫌なところがぎっしりと詰まった映画で非常に不快で良かった。

大切にしすぎて依存するとよくないし、逆に大切にしすぎず薄情なのもよくないと言うとありきたりな言い方だが、アリ
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バービー(2023年製作の映画)

4.0

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「男性らしさ」「女性らしさ」という「ゲーム」から降りて「自分らしさ」へ。このスローガンには構造主義的なパラドクスが内包している。

構造主義とは、ごく大雑把に言えば個人(社会)は社会(個々人)が規定す
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ミッドサマー(2019年製作の映画)

4.4

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ジャンル映画でない、特に本作のような難解な映画を理解するには図式に頼らざるを得ない場合がある(洗練された映画は随所に「考察」のしがいのある箇所がある)。

そこで、吉本隆明の「個人幻想(自己幻想とも)
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インセプション(2010年製作の映画)

5.0

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「今現実だと思っている世界は本当は夢なんじゃないか」、この問いは、デカルト以降の認識論を反復する。現代では、「水槽の中の脳」の思考実験が有名だ。人間は、一度世界を懐疑し始めると、論理的に無限後退に陥る>>続きを読む

余命10年(2022年製作の映画)

3.5

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茉莉の人生が余命10年のせいでいわば決定論の世界になったのに対して、和人は自死を選べる自由意志の世界のまま生きていて、茉莉は怒りを覚えた。

でも、自由意志の世界にも決定的な側面がある。「確かに次なん
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正欲(2023年製作の映画)

4.1

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本作を理解するにあたってまずフーコーを思い出したい。フーコーは、系譜学的分析にあたって、近代以前、近代への過渡期、近代以降(18世紀以降)の三つに分けた。私たちは、近代以降の枠組みに沿って生きている。>>続きを読む

そして、バトンは渡された(2021年製作の映画)

3.4

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人間関係は「船」に似ていて、「ノリが合う」「趣味が合う」「話が合う」、そういう「同じさ」が「同じ船に乗れるか」を左右する。

優子は病気を抱えていたため、水戸と「同じ船」に乗ってブラジルに行けなかった
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ドント・ウォーリー・ダーリン(2022年製作の映画)

4.0

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「男性社会」に「女性たちは閉じ込められている」という台詞から、ホモソーシャルな視点から観る向きが多いが、それは本作の筋書きの一つに過ぎないと思う。重要なのは、筋書き(シニフィアン)を使って何を表現する>>続きを読む

TIME/タイム(2011年製作の映画)

3.6

25歳以降歳を取らない、時間=通貨という設定。
時間を時間で稼ぎ、時間を時間で払う(バスなど)。

さて、昨今の考古学の研究成果によれば、貨幣の起源は物々交換ではなく帳簿、特に貸借関係であることがわか
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ヘロイン×ヒロイン(2017年製作の映画)

3.7

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アメリカ合衆国東部に位置するウェストバージニア州(アパラチア山脈中に位置することから山岳州the Mountain Stateとも呼ばれるらしい)が舞台。

この州において、ヘロインの過剰摂取による死
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パプリカ(2006年製作の映画)

4.7

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20世紀までは、「現実が夢をつくる」が命題だ(本作『パプリカ』はフロイトやユングを引用している)。だから、夢の内容に現実のトラウマやコンプレックスを「発見」することができる。

しかし、21世紀以降の
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ウォーレン・バフェット氏になる(2017年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

投資家としてのバフェットというよりも、人物としてのバフェットを追うドキュメンタリー。

所感は、「思ったよりも人格者」だったということ。バフェットは、生涯で自身の資産の1パーセントも使うことはない。「
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ヴィーガンズ・ハム(2021年製作の映画)

3.7

どのようにして財やサービスが提供されているかを大して知りもせずに享受しているという怖さを身に染みて感じた、、

特別編集版 名探偵コナン 本庁の刑事恋物語~結婚前夜~(2022年製作の映画)

3.6

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そういや白鳥が黒ずくめの組織の一員説出てた時期もあったなあを思い出す回。

傍若無人な松田陣平を失った佐藤刑事が、年下で慕われやすい性格の高木刑事に熱を上げる感じ、さすがに解像度高い。

名探偵コナン vs. 怪盗キッド(2024年製作の映画)

3.6

意外と忘れてる箇所があったのとまとめ方が比較的綺麗な回だったので観てよかった。

園子がキッドに熱を上げてるのを見て蘭が苦笑いしてるの何回見ても好きすぎる。

創造的進化(2019年製作の映画)

4.0

アンリ・ベルクソンの『創造的進化』から着想を得てるらしい。

我々はどこから来たのか、これはよく考える
我々はどこへ行くのか、これはたまに考える
我々は何者か、恐ろしいことにほとんどの人は、これは全く
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キングコング(1976年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

先に原作を観るつもりだったが、雰囲気を知ってから原作をしっかり観たく、ジョン・ギラーミンのリメークから。

占い好きで神秘的なドワンがキーパーソンなのは明らかで、そんなドワンがコングに心を開いていく過
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名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)(2024年製作の映画)

3.9

キッド回はミッションインポッシブルみとイナイレみがでかくなりがち。

沖田変装のキッドの京都弁を揶揄してたが、服部、あんたも大概や。

名探偵コナン 緋色の不在証明(2021年製作の映画)

3.3

赤井ファミリーに関する総集編的作品なので、復習的な役割も持つ。

しかし、総集編にしても繋ぎ合わせが独特のパッチワークなので、今から追う人は単に該当箇所を追う方がかえって近道なのではという感も否めない
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名探偵コナン 紺青の拳(2019年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

京極真がドラゴンボールな回であり、怪盗キッドがルパンな回。
てか、犯罪行動心理学なんて分野あんまり耳馴染みがなく、普通に犯罪心理学でいいんではと思った回。

コナンがアーサー・ひらいって名乗ったのおも
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四月になれば彼女は(2024年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

「愛を終わらせない方法」という台詞が数回に渡って出てくる。どうやらキーワードらしい。

この回答の一つとして、藤代が動物園に通いつめ、獣医である弥生の好きな動物の特徴をノートに列挙していくシーンが出て
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JAWS/ジョーズ(1975年製作の映画)

3.9

正直めちゃくちゃ面白かった。

ホホジロザメの「人喰いザメ」の側面が描かれるが、サメは553種いる中で約1%しか人を食べた例はないらしい。
特に、アザラシ等の獲物と見間違えて食するという見解が広がって
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

原題は“Anatomy of a Fall”で邦題はほぼ直訳。
重要なことは、“a Fall”が夫婦関係のことでもあるということだが、それにしても少し退屈した。

ジュスティーヌ・トリエ監督はあえて平
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ベイマックス(2014年製作の映画)

3.5

ディズニー作品はほとんど観ないが、個人的には最高傑作だと思う。

ヒーローモノ的だが勧善懲悪過ぎず、兄と自身の目標の喪失ゆえの埋め合わせとしてのベイマックスから、ヒーローとしてのヒロと共生するベイマッ
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不都合な真実(2006年製作の映画)

3.8

本作を観て、人々が「不都合な真実」を受け入れないのはどうしてか、をより考えることになった。

思い出したのはターリ・シャーロット『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』である。
シャーロットは、データ
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