やったカニさんの映画レビュー・感想・評価

やったカニ

やったカニ

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Here(2023年製作の映画)

4.6

深夜に窓を開け、風の音か、乗り物の音か、生活の音か、街の息遣いのような、ありあわせの言語では表現のしようのない音を聴く時間が好きで、『Here』はつまるところそんな映画だ。
しかし、音というものは記憶
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ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.2

『Here』と同じく、16mmフィルムで撮影した、スナップショットみたいな街と人々と最小の物語。(両作とも主人公は移民で、その”ホーム”としてのブリュッセルを映し出すとのこと。)
映画の時刻は違うけど
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マッドマックス:フュリオサ(2024年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

ジョージ・ミラーは同じ映画を作らないらしい。
怒りのデス・ロードから全く別の方向にハンドルを切って、なおめちゃくちゃ良かった。マッドマックスの世界観、登場人物がグッと拡張される感慨。ウォータンクになん
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HOW TO BLOW UP(2022年製作の映画)

3.5

Netflixで8話くらいのドラマにした方が良かったと思う。

少なくとも今のアメリカで、政治を扱う映画としては失敗している。
リベラルな若者たちがより左に遠のくこと、分断下の社会風潮や構造にもっと切
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ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!(1999年製作の映画)

3.8

アレクサンダー・ペイン監督作初。
自由奔放な編集やモノローグが印象的で、映画の質感は同じく60年代アメリカ生まれのリンクレイターに似てると思った。

民主主義の基本システムを粗末に扱った男には当然バッ
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パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

3.9

正直ハマらない部分が大半だったが、ラストのシークエンスにぐっと来た。ラストが良かったこそ、全体を振り返って、あれこれ考えたくなる余韻が残る。

この映画は、言ってしまえば”初恋の終わり”なのだが、それ
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メメント(2000年製作の映画)

4.2

再鑑賞。以前観た時は寝た。
クリストファー・ノーランはアイデアの炸裂!だ。これは緩やかな炸裂。

ミツバチと私(2023年製作の映画)

3.9

水に浸かる、ひいては服を脱ぐという行為が表す親密さ。
市民プールの男女二元論なごみごみとした社会と対照するように、大自然の川で遊ぶ風景は、広く美しく描かれる。そこでは、ルシアは自己を開放するし、親密な
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デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

3.9

キャラクター周りの描写や演出がなんとも薄味なのはもう置いといて、物語の筋の方を語っていくべきだと思った。
ゼンデイヤもオースティン・バトラーも超かっこいいんだけど、素材がいいだけで活かしきれてない感じ
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ヴィデオドローム(1982年製作の映画)

3.8

ここから先はすべて幻覚だと提示されたかと思いきや、メタ構造の連続でリアルとフィクションと思考が混濁する。

サイコなテレビ映像が及ぼす影響への批判も、あるにはあるのかもしれないけど、ビデオドロームは人
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.0

その時代の”ポライト・ソサエティ”を進撃するベラ。
ベラの成長に合わせて、段階的に舞台(ウソすぎる街々!)がセットされてるのがとても良かった。

ロブスター(2015年製作の映画)

3.7

ストーリーや演出面がシュールなのはもちろん、画面構成や撮影も超現実的だったな。特に前半のホテル部分は。

パートナーがいない一人身の人間は動物にされるというSF設定は、思ったほど前面に押し出されていな
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ファルハ(2021年製作の映画)

-

壁越し・隙間から覗くカメラと、表情で語るファルハ。
身を隠すための壁は、身を隔てる壁へと意味が変化する。しかしどちらも、目撃者・語り継ぐ者の視点ともいえる。

人間に絶対的に平等に与えられた生/死の瞬
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空に聞く(2018年製作の映画)

-

インタビューの隙間、街や祭りを撮っているときはしっかりと映画になっていた。

息の跡(2015年製作の映画)

-

東日本大震災についての個人の記憶(体験)を持たない世代が育ってきている中、佐藤さんが言っていた「将来的に、この震災を知ろうと思う人は興味がある人だけだ」というようなニュアンスの言葉を考えると、本当にそ>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.8

分かってはいたことだけど、この映画の観客はあくまで傍聴人。
感動や、興奮や、共感といった、ある種の映画的な愉しさは無かったので、その点、とりわけ映画館で観る必要はない作品だったかもしれない。
断片的な
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瞳をとじて(2023年製作の映画)

-

自分の言葉で書こうと思ってるうちに、少し時間が経ち過ぎてしまった。
この映画を観てる途中も後も、色々なことを考えてたので、また今度見直してちゃんと文字に起こそうと思う。

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.3

ポジティブな映画だった。
前に押し出されるわけではなく、自然そのままの人の善性。

病気のせいで、自分のことしか考えられないけれど、心の片隅にその人はいて、ふと思い出すと、ほっとする。
一日中その人の
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ショーイング・アップ(2022年製作の映画)

4.2

観てからしばらく経つけど、じわじわとまだ心地いい。ずっと観てられる。
個人的に、美術学校のあのゆったりした空気はハマったし憧れる。

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

4.1

町を映す広い画が多いのにめっちゃ窮屈だし、逃走は全然ドラマチックにならないし、たまたま法の線を越えてしまっただけで、高速の料金所すら超えられない三十路男情けなさすぎるよ。
それだけに、この鬱屈さを破壊
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ビヨンド・ユートピア 脱北(2023年製作の映画)

-

2024新作1本目。
今年もこのような映画を観ていかなきゃいけない。

TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー(2022年製作の映画)

3.7

おわ~怖かったー。
霊が憑依する時にカメラが傾くアゲ感が最高。
色々と『ゲット・アウト』みを感じるけど、話のまとまりは断然あっちの方が面白かった。

窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)

4.6

28日のお昼に観たけど、年の瀬の空気感もあってなんか良かった。
スクリーンは満席で、子供連れも多かったが、映画の中身は大人のアニメーションだった。
映像で語るシーンが多く、小さい子供は読み取れない箇所
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不安は魂を食いつくす/不安と魂(1974年製作の映画)

4.6

超面白かった!
「不安は魂を食いつくす」ってその通りだった。
スタンダードサイズの使い方マジで巧すぎる。

差別の視線が双方向的なものだとよくわかる。それこそ頻繁に登場する鏡のショットみたいなもんだ。
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ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972年製作の映画)

4.0

スタンダードサイズのスクリーンめいっぱいに収まる人物たち。
舞台の奥行きを感じさせる人物の配置とか、目線を交差させない会話とかは非常に演劇的だったな。

アーティストとモデルという、いわば雇用関係、職
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マリア・ブラウンの結婚(1978年製作の映画)

4.4

夫のためになら、マリア・ブラウンは割り切る。映画の中の言葉を使うなら、たしか「自己を確立する」だったと思う。
愛人と結婚の線引き、仕事とプライベートの線引き。母親の再婚相手を目撃した時、ベティとは反対
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ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022年製作の映画)

4.3

「戦う」も「去る」も、どちらも挑戦的で覚悟のいる選択だよな。しかも女性たちにとってはこれが初めての選択という行為。
赦す/戦う/去るの三択は、女性という立場だから浮かび上がるものだ。もしこの事件におい
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ラストレター(2020年製作の映画)

3.6

キャスト全員最高。
岩井俊二のキャスティングやはり信用できる。

レディ・バード(2017年製作の映画)

4.8

『ストーリー・オブ・マイライフ』『バービー』を観て、順番的には一番最後に観たのがこの『レディ・バード』な訳だけど、自分の中でグレタ・ガーウィグという作家への信頼は、もうほんとに確かなものだ!

アメリ
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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

4.0

終始低刺激だったけどかなり面白かった。
ただ普通に長いと感じたし所々寝てしまったので、あんまコメントできない。

ディカプリオがヘイルに見せる子供っぽい顔と、モーリーに見せる夫の顔と、FBIに見せる中
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キング・オブ・コメディ(1983年製作の映画)

3.8

90分間たっぷりとロバート・デニーロ演じるいかれた青年、パプキンの奇行を観させられてるわけで、ラスト10分彼のトークはマジで一瞬も笑えない。自虐風自己紹介は、テレビ越しにはじめてパプキンを見る観客にと>>続きを読む

正欲(2023年製作の映画)

3.6

原作既読。

俺が観に行った回では、稲垣吾郎演じる検察官が、性的快楽を動機として蛇口が盗まれた事件の記事を読んで「訳が分からん」的なことを言う割と序盤のシーンで笑いが起こったんだけど、その人らにとって
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世界のはしっこ、ちいさな教室(2021年製作の映画)

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”世界のはしっこ”というタイトルの通り、やっぱり都市/地方の格差を考えずにはいられなかった。それは経済、物流、情報の格差だけじゃなく、地方に根付く文化や因習の差もあるかなと思った。
例えばバングラデシ
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ぼくたちの哲学教室(2021年製作の映画)

4.8

マイク・ミルズ監督の『カモン カモン』と共鳴させながら観て、もうほんとに良かったよ。
対話において哲学とは”問い”から始まるもので、それは「相手のことを分かりたい」という感情だ。ケヴィン・マカリーヴィ
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