GENOKENさんの映画レビュー・感想・評価

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関心領域(2023年製作の映画)

3.9

焼却炉の煙、銃声や叫び声の傍らで完璧な生活を築くナチスの幹部の家族が主人公。すべてのショットは塀の背後に拡がるおぞましき世界と収容所内で何が起きているか理解していてなお、受け入れている家族の様子がおぞ>>続きを読む

碁盤斬り(2024年製作の映画)

3.5

古典落語の題目だけあって、鮮やかな話し運び。囲碁という静かな存在を躍動的な映像にしているのは、初の時代劇に挑んだ白石和彌監督の意気込みが伝わってくる。ただ、主人公をストイックに作り過ぎて堅苦しく、人間>>続きを読む

ミッシング(2024年製作の映画)

4.3

突然、娘が失踪した夫婦とそれに関わる人々の物語。周囲の好奇の目にさらされ、SNSの悪意ある書き込みに圧迫され、狂気スレスレの感情へといたる過程は凄まじい。メディアの報道姿勢、他人への無関心など現代なら>>続きを読む

ありふれた教室(2023年製作の映画)

4.4

権威原理や社会の縮図のような学校を背景に、倫理観に強くこだわる教師が、ほんの些細な判断ミスから事態をどんどん悪化させていく。善意の教師や聡明な生徒の主体が衝突して渦を巻き、ボタンの掛け違いから加速する>>続きを読む

猿の惑星/キングダム(2024年製作の映画)

3.7

猿が完全に地上を支配し、退化の進んだ人間は迫害されるという社会の構図。今回はかなり”猿と猿の物語”になっているところに新味を感じる。細かい表情も含め猿たちのビジュアルが違和感なく、モーション・キャプチ>>続きを読む

シティーハンター(2024年製作の映画)

4.1

歴史ある作品の満を持して放たれた日本初となる実写映画化。鈴木亮平演じる完璧な冴羽獠がリアルな存在になった。シーンごとに二枚目と三枚目を行き来し、肉体改造含め、生身の説得力が随所に感じられる。100tハ>>続きを読む

悪は存在しない(2023年製作の映画)

4.6

森の中を人が歩き、水を汲み、薪を割る、ただそれだけで画面が活気づき、意味深で魔法のようなカットの連続に息を呑む。それらにかぶさるように流れてくる石橋英子の音楽も印象的。車の中での長い会話が事態を転回さ>>続きを読む

ウィッシュ(2023年製作の映画)

1.8

ディズニー100周年を祝福するこの映画は随所にこれまでのディズニーの要素がちりばめられ、そこを見るだけで楽しいが、過去の遺産への目配せが多い分、映画としての新しさに欠ける印象に。ダイバーシティを過度に>>続きを読む

青春18×2 君へと続く道(2024年製作の映画)

4.0

人物や行動、エピソードも岩井俊二監督『Love Letter』をリスペクトしており、改めて藤井道人監督とラブストーリーとの相性の良さを感じる。展開としては読める部分もあるが、それでも心に残る素敵な恋愛>>続きを読む

無名(2023年製作の映画)

3.5

日中戦争下の上海を舞台に、共産党、国民党、日本軍の三つ巴の騙しあいのスパイノワール。時系列に従わず、前後を行ったり来たりする、パズルのようなストーリーの語り方は効果的であるが、登場人物達がどういう意図>>続きを読む

俺らのマブダチ リッキー・スタニッキー(2024年製作の映画)

4.2

オスカー獲得を経たピーター・ファレリー監督が過剰な下ネタ満載のコメディに原点回帰した。「最後まで噓を突き通すことができるか?」がストーリーの根幹な本作。ただのバカ映画に収まらない、ちょっといい話的な深>>続きを読む

忘れられし愛(2023年製作の映画)

3.9

記憶喪失の医者、幼い頃に生き別れになって美しく成長した娘との再会、身分違いの恋、嫉妬が引き起こした事故など、ストーリーは韓流ドラマに見られるような数奇な運命系で波乱万丈の半生がテンポよく描かれる。ご都>>続きを読む

ゴジラxコング 新たなる帝国(2024年製作の映画)

3.2

モンスター・ヴァース最新作は良くも悪くも「東宝チャンピオンまつり」的な怪獣大饗宴。あまりにも大味な脚本や過剰なVFXが気になってしまうものの、純正娯楽作にそれを問うのは無粋というもの。ローマもリオもカ>>続きを読む

グランツーリスモ(2023年製作の映画)

3.5

部屋でゲームをしていた青年が、実際のレーサーとしてスカウトされ努力する。徐々に評価を受け、手応えを感じ始めた矢先、束の間の幸福が挫折を迎える。慢心、傷心、鍛錬、再挑戦というスポ根ドラマ要素が満載。メカ>>続きを読む

BLUE GIANT(2023年製作の映画)

4.4

“音が聞こえてくる”と称された原作コミックだが、上原ひろみらの参加によって、「JASS」が奏でる音が完全再現。音響へのこだわりも随所に感じられ、あえてTVシリーズにしなかった理由も頷ける。序盤〜中盤に>>続きを読む

ダムゼル/運命を拓きし者(2024年製作の映画)

3.6

ドラゴンの生贄にされる為に囚われたプリンセス。昔のディズニープリンセス映画を思い起こさせる単純なストーリー運びだが、清々しいまでの勧善懲悪&90分弱ですっきり片付くバトルはツッコミどころ満載ではあるが>>続きを読む

異人たち(2023年製作の映画)

4.0

山田太一原作を基に、主人公をゲイ設定にしたことで、亡くなった両親との確執など、心理描写の巧さを見事に捉える。アンドリュー・ヘイ監督らしい寂寞とした映像美はもちろん健在だが、ホラー展開も巧い具合に昇華し>>続きを読む

女神の継承(2021年製作の映画)

3.8

韓国映画『哭声/コクソン』の祈禱師の出自を探り、祈祷師一族に巻き起こる悲劇を、撮影クルーが密着という設定をモキュメンタリータッチで描く。神秘的なタイの田舎を映し出す序盤から、次第に不穏な空気が立ち込め>>続きを読む

パレード(2024年製作の映画)

3.5

藤井道人監督の思いが詰まってるというのが強く伝わる天国とこの世の境い目の世界の話。豪華キャストたちのそれぞれの"未練とゴースト視点の達観エピソード"が程よく小分けされ、残り約1/3を使って描かれる映画>>続きを読む

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)

3.1

金持ちが途上国のリゾート地に行って罪を犯してもお金を積めば自らのクローンに罪を負わせ放免されるという設定は、今の社会を考えると妙なリアリティがあるように思える。面白い着想だが踏み込みが浅く、悪趣味系の>>続きを読む

プリシラ(2023年製作の映画)

3.5

プレスリーの妻プリシラの視点から見た物語。14歳で世界的なスーパースターと恋に落ちてしまうという、常人には計り知れない経験。ソフィア・コッポラ監督の実話モノというのも珍しいがファッションなり、選曲なり>>続きを読む

ため息に乾杯(2024年製作の映画)

3.3

名高い作家である富もある、夫の突然の事故死。喪失から立ち直ろうとする主人公を描きつつ、彼を支える2人の親友がパリで、それぞれ抱える根源的な問題に向き合う。シリアスな友情ドラマに、センチメンタルなロマン>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

4.1

韓国と北米という距離に隔てられた幼馴染みふたりの関係。好き同士なのに人生のタイミングが合わなくて結ばれなかったという監督自身の体験にもとづく究極にパーソナルな物語。過剰なロマンチシズムや大げさなドラマ>>続きを読む

アイアンクロー(2023年製作の映画)

3.9

実在のプロレスラー、フリッツ・フォン・エリック一家の実話が男性性の抑圧に殺されていく男達の悲しき神話として差し出される。80年代プロレスを知らない身からすると、後半の悲劇はかなりの衝撃度。その瞬間をあ>>続きを読む

バッドランド・ハンターズ(2024年製作の映画)

3.2

『コンクリート・ユートピア』の世界観を引き継ぎ、大地震でディストピアと化した例の団地で、いつものマ・ドンソク無双が楽しめる。特に新しい驚きや工夫も感じられないが、マ・ドンソクの絶対に死なない安心感と爽>>続きを読む

マディのおしごと 恋の手ほどき始めます(2023年製作の映画)

3.7

車税も家賃も払えない落ちぶれた女性と、両親が箱入り息子のために筆下ろしの相手探しを求人で募集する。32歳が報酬の車目当てに19歳にSEXを迫るのは倫理的にアウトだが、型破り過ぎる展開で笑い飛ばす。浜辺>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.3

原爆を作り出したオッペンハイマーの栄光と無念を描くアカデミー作品賞受賞作。実話映画ではあるがクリストファー・ノーラン監督は、その中にサスペンス的な演出を盛り込んだことであっという間の3時間。王道のドラ>>続きを読む

ピアノ・レッスン 4Kデジタルリマスター(1993年製作の映画)

4.6

公開30周年記念の4Kレストア版。19世紀半ば、声が出せなくてピアノで感情を吐露する女性と娘がピアノと共にニュージーランドの入植地に嫁入りする。抑圧された新天地において、レッスンという形で自由にピアノ>>続きを読む

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)

3.8

2時間半を超えた前作がまだまだ”序章”に過ぎなかったことがよくわかるシリーズ第2弾。複雑に入り組んだ人間関係や思惑、過去と未来など要素が”盛り込み過ぎ”と言って良いほど盛り込まれ、答えがないままの問い>>続きを読む

もっと遠くへ行こう。(2023年製作の映画)

3.7

夫が宇宙移民の候補に選ばれたことをきっかけに、夫婦関係の揺らぎを描く。妻を所有物扱いする夫に辟易としていた妻が、夫の代用となるクローンに対してどう接するのか。全編を覆っているのは疑心暗鬼。夫婦の繋がり>>続きを読む

ドイ・ボーイ:路地裏の僕ら(2023年製作の映画)

3.1

タイのチャンマイ県の難民セックスワーカーの生活を力強くも容赦なく描く。ミャンマーから逃亡する不法移民が直面している搾取の話は、ただ生き残る手段に過ぎないが、新型コロナによって性産業業界の多くが閉鎖され>>続きを読む

正欲(2023年製作の映画)

3.7

〈普通〉とは異なる欲望を抱く人々の生きづらい人々の連帯を描く。メインで描かれる欲望、つまりエクスタシー=性欲を引き起こす対象が水フェチで、どちらかと言えば美しい印象で描かれているが、不寛容さをストレー>>続きを読む

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)

3.9

犬小屋で育てられた女装男とギャングとの闘い。リュック・ベッソンの脚本・監督によるこの犯罪映画は、彼の持つ美学性とバイオレンス性が久々に融合した快作。後半、犬を使って犯罪に手を染めるナンセンスな飛躍に戸>>続きを読む

雪山の絆(2023年製作の映画)

4.0

アンデスの山中に墜落した乗客たちが、寒さと飢えと次々と襲いかかるアクシデントと戦いながら生き抜いていくさまを描く。飛行機墜落シーンはもちろん、キーポイントとなる凄惨な瞬間は徹底的リアルにアプローチ。観>>続きを読む

ポップスが最高に輝いた夜(2024年製作の映画)

4.1

名曲『ウィ・アー・ザ・ワールド』。何度も聞いたか分からないぐらいの名曲。アメリカの音楽界を代表するスーパースター総勢45人をどうやって集結させたのだろうと思っていたが、American Music A>>続きを読む

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)

4.7

黒人の売れない作家が、半分冗談で黒人が書きそうだと思われるステレオタイプだらけの小説を書いたら、白人だけでなく黒人の知識人層にもバカ当たり。リアルじゃない物語がリアルだと絶賛される一方で、主人公の周り>>続きを読む

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