oguchiさんの映画レビュー・感想・評価

oguchi

oguchi

映画(57)
ドラマ(0)
アニメ(0)

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.5

他人を信じられない自分のような人間でも寂れた心が少し洗われた。
必要としているなら他者に寄り添える人でありたいと思えた。
説明しすぎずに人物を見つめる脚本が好みだった。
夜の街の灯りが沁みた。
高低差
>>続きを読む

市子(2023年製作の映画)

4.6

杉咲花が圧巻だった。

“自分”として生きるために彼女は“何者”になったのか?時に儚げに愛らしく、時に感情を失ったかのように怖ろしく。

逃れられず一線を越えざるを得なかった。
幼少期の過酷な運命を背
>>続きを読む

愛にイナズマ(2023年製作の映画)

4.6

人は誰もが本音を隠して生きている。
国や社会も都合の悪い情報は隠蔽し、真実でさえ隠すこともあるだろう。

コロナの世界で、人はマスクで顔を隠すことになった。人の気持ちがより分かりづらくなった。表情がバ
>>続きを読む

別れる決心(2022年製作の映画)

4.2

霧のように真相が見えない愛と未解決殺人事件の交錯。
古典的なメロドラマながら斬新な撮影と編集が光るパク・チャヌクの新境地と言えるが、映画の面白さとしては格下げした印象。

刑事と容疑者の女が惹かれ合う
>>続きを読む

エゴイスト(2023年製作の映画)

4.5

側から見ると依存に見えても。
たとえ一方的な献身でも。
身勝手なエゴだとしても。

受け取る側が喜んでくれてたら。
愛が何かは分からないけど、大切な人の気持ちを動かすことができたなら。

どんな形でも
>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.5

ボクシングジムでのトレーニング。
街の人混み。電車の高架下。

生活音や環境音が際立つと同時に、主人公のケイコには聞こえていない“音”を認識しながら鑑賞する刺激的な違和感。

劇中に音楽は無い。
ケイ
>>続きを読む

ある男(2022年製作の映画)

4.6

親。血筋。自分では選べない縛りへの葛藤と諦念。他人を羨むこと。蔑むこと。誰もが持っている人間の“無意識的な”弱みが、自分の記憶とも重なり、心がざわついた。映画の登場人物たちと同様に自分は「何者」なのか>>続きを読む

サイレント・ナイト(2021年製作の映画)

4.2

今日はクリスマス。しかし、人類が滅びゆく地球最後の日でもあった・・・。

この「世界終末」と「クリスマス」を掛け合わせた設定が最高。

テイストが近いのは『ドント・ルック・アップ』。こちらはスケール大
>>続きを読む

裸足で鳴らしてみせろ(2021年製作の映画)

4.5

触れたい。けど触れ合えない2人は乱暴に掴み合う。何度も何度も。この格闘はセックスだ。いや、セックスには至れない、2人の愛の形か。想い合うからこそ傷つけ合う、切ない恋愛の本質。

ナオミとマキ。男女を判
>>続きを読む

わたしは最悪。(2021年製作の映画)

4.5

特別な不満は無いけど何だか寂しい。
やりたいことはあるけど絶対じゃない。
迷い、彷徨い続ける彼女は決して最悪じゃない。
人生は正解の無い選択の連続で自由だ。

どこか“自分”が定まらない自分を俯瞰した
>>続きを読む

ニューオーダー(2020年製作の映画)

4.5

蛇口から流れ出る緑色の水。高級車に投げつけられた緑のペンキ。富裕層の結婚パーティーを侵食する「緑」の違和感。

ヒロインの鮮やかな赤のスーツ。虐殺された人々が流す血。色を失った崩壊した世界で際立つ「赤
>>続きを読む

三姉妹(2020年製作の映画)

4.6

ポスタービジュアルの柔らかい雰囲気を良い意味で大きく裏切られた。
本作はもっとシビアで、心をえぐられる。
そして、胸を激しく揺さぶられる。

最初はこの三姉妹が苦手だった。
娘に甘すぎる長女、完璧を求
>>続きを読む

夜を走る(2021年製作の映画)

4.5

人間は弱くて、狡くて、かしこい。
嘘をつき、ごまかし、何とか「日常」を作る。「日常」を走る。「日常」を生きる。

この人間の本質を容赦無く捉える佐向大監督の眼差しの深さと怖ろしさとユーモアを堪能。
>>続きを読む

異物 -完全版-(2021年製作の映画)

4.2

いがらしみきおの漫画「Sink」を彷彿とさせる日常に潜む違和感。台所で煙草を吸う後ろ姿を見つめるショットと抽出するコーヒーの滴りの映像ですぐにこの不条理なモノクロ世界に入り込んだ。触手のアナログ感と日>>続きを読む

誰かの花(2021年製作の映画)

4.5

団地のベランダから落下した植木鉢が地上の住民の頭に直撃した。この不慮の事故をめぐる人々の心の揺らぎが観客の胸を静かに深く揺さぶる。「真実」がやはり正しいのか?家族を守る「偽り」は許されるのか?誰もが被>>続きを読む

スティルウォーター(2021年製作の映画)

4.4

宣伝文句のサスペンス・スリラーよりも人間ドラマとしての印象が強い。殺人罪で逮捕された娘の無実を証明しよう奔走する父親の執念。異国の地で出会った母娘との触れ合い。家族とは?人生の再生とは?小説のような丁>>続きを読む

春原さんのうた(2021年製作の映画)

4.4

大切な人を失ったであろう女性のささやかな日常。与えられる情報は限りなく少ない、ほぼ余白の物語。
窓、扉、カメラなどフレームが印象に残る。
人を写すこと、映すこと、記憶に残すこと。
喪失感が漂う寡黙なス
>>続きを読む

草の響き(2021年製作の映画)

4.5

ただただ走る。
ただただスケボーで滑る。
この何も語らないロングショットの雄弁さ。
心を病んだ主人公の和雄と、同じく生きることに悩む若者たちが初めて同じ画面に映り込む時の映画的な高揚感。和雄と妻が初め
>>続きを読む

ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ(2018年製作の映画)

4.8

後半の60分3Dワンカットが素晴らし過ぎた。これほど甘美で幻想的で映画的な夜はなかなか無い。
忘れられない女を探す1人の男の記憶。夢か現実か。前半は夢のように曖昧に時間軸が交差して複雑。しかし、この記
>>続きを読む

タロウのバカ(2019年製作の映画)

4.4

‪『タロウのバカ』
大森立嗣監督の魂の叫び。閉塞した現代社会への怒りと自身のアイデンティティが剥き出しの猛烈なオリジナル脚本。

この凄まじい映画の力を受け止めきれるか。いや、ただ目撃すればいい。た
>>続きを読む

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)

4.4

‪ヨルゴス・ランティモスの毒がちょうど良い塩梅の愛憎劇を堪能。三女優の怪演が圧巻。特に個人的に『スターリングラード』からのお気に入り、レイチェル・ワイズに痺れた。本物の愛情が狡猾な計算に勝てない残酷さ>>続きを読む

ウトヤ島、7月22日(2018年製作の映画)

4.3

2011年7月22日。日本では3月11日に震災があった年にノルウェーで起きた、知られざる悲劇。当時32歳の男がたった1人で77人を殺害した最悪のテロ事件。悪夢のような銃乱射事件を観客に追体験させる驚異>>続きを読む

バーニング 劇場版(2018年製作の映画)

4.7

1人の女と2人の男。多くを語らない脚本。生々しい俳優の息遣い。不穏な音楽が鳴り響く田園風景をひた走る男の姿が胸に迫る。映画的な瞬間の連なり。ヒロインの可憐で寂しげな魅力に自分も囚われて、スクリーンに没>>続きを読む

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)

4.4

少年時代に『グーニーズ』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観て映画を好きになった。その後、スピルバーグとキューブリックという2人の天才と出会い、映画を監督で観るようになった。ポップカルチャーてんこ>>続きを読む

ザ・スクエア 思いやりの聖域(2017年製作の映画)

3.8

かなり意地悪な映画。
偏見。差別。偽善。無関心。人間の本質をこれでもかと執拗に突きつけてくる。しつこい。面白い。けど笑えない。げんなり。
見て見ぬふりをしてしまう、ある1シーンの緊張感と居心地の悪さは
>>続きを読む

シェイプ・オブ・ウォーター(2017年製作の映画)

4.5

水に包まれた純粋な愛のかたち。その反面となる悪役マイケル・シャノンの残酷さと空虚さこそ、最も人間らしいのかも。空間演出とマイノリティたちのキャラクター造形が素晴らしい。主人公イライザは『パンズ・ラビリ>>続きを読む

リバーズ・エッジ(2018年製作の映画)

4.4

恋愛に友情に人生にとにかく悩んでもがいた10代の頃を思い出す。多感なあの時代だから感じたこと。あの時は気付かなかったこと。かつては耐えれなかった孤独。その孤独を受け入れて、今は孤独と共に生きている現在>>続きを読む

スリー・ビルボード(2017年製作の映画)

4.4

憎しみの炎がさらなる憎しみを呼ぶ負の連鎖。その中でも、燃え尽きずに残る人間の温かさと愛。
善悪あわせ持つキャラクターたちが抜群。フランシス・マクドーマンドのブレない強さは『ファーゴ』の女警官が子供を産
>>続きを読む

デトロイト(2017年製作の映画)

4.5

白人警官の黒人に対する理不尽な差別と暴力。何の罪もない黒人の青年たちと一緒に観客も命乞いをする感覚。「たのむから撃たないで」と。地獄の一夜。事件後の尋問。裁判。その後の人生。酷すぎる事実に憤慨。人間の>>続きを読む

FAKE(2016年製作の映画)

4.4

白黒はっきりさせたがる現代社会。あらゆるメディアの情報は伝える側の視点や主観が加わるもの。ドキュメンタリーもしかり。本作も森達也の意地悪さとユーモアと優しさのバランスが絶妙で非常に面白い。 当たり前だ>>続きを読む

スポットライト 世紀のスクープ(2015年製作の映画)

4.6

役者たちの芝居の上手さ、テンポの良い編集、抑制された演出、絶妙な音楽。胸くそ悪い権力の巨大な罪を暴き出す記者たちの地道な仕事ぶりとチームの魅力に終始釘付け。積み重ねた取材と時間がたどり着いた真実。一つ>>続きを読む

マジカル・ガール(2014年製作の映画)

4.6

タイトルやポップなイラストのビジュアルからは想像も出来ない展開に唖然。宣伝マン泣かせの予測不能な物語が面白い。アニメ好きの少女や日本通の監督といった特異なジャパニーズ色は、ほんの入り口に過ぎない。映像>>続きを読む

ディーパンの闘い(2015年製作の映画)

4.5

闘いという邦題よりも家族のドラマの印象が強い。内戦で祖国から逃れた擬似家族が本物の家族として再生していく様がスリリングに描かれる。余計な説明を省き、今そこに生きる人々を生々しく映し出すオディアールの演>>続きを読む

私たちのハァハァ(2015年製作の映画)

4.4

面白かった。POVが少し煩わしいけど、客観の映像がとても良い。感情をさらけ出す気まずい喧嘩からLINE上の楽しい会話に流れる演出が最高だった。泣きながら仲間にぶつける本音もスマホの無言のやり取りも彼女>>続きを読む

野火(2014年製作の映画)

4.4

覚悟はしていたが、それ以上にズシンときた。あまりに辛い。でも目が離せない。音、熱さ、臭い。人間の愚かさと恐ろしさ。戦争を体感する。鮮やかな密林の緑、青空に映える白い雲。血と炎の赤とのコントラスト。脳裏>>続きを読む

お盆の弟(2015年製作の映画)

4.4

切なくて、可笑しくて、切なくて。時おりガツンと現実を突き付けられて、主人公と一緒にハッとさせられる。離婚寸前の弟と癌を患う兄。人生の重大な危機を描いた物語なのに妙に軽やか。哀愁を帯びたモノクロームの世>>続きを読む

>|