せぜあきさんの映画レビュー・感想・評価

せぜあき

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ミッシング(2024年製作の映画)

3.2

吉田恵輔監督が「悪意」を描かせたら国内でも指折りの作家になったのは間違いない。2010年代までそれは“恋愛/サスペンス/青春”といった物語の主題に対するアクセントとして使われていたが、近年は悪意そのも>>続きを読む

シティーハンター(2024年製作の映画)

2.5

■あの地獄の様な出来の『名もなき世界のエンドロール』の監督を直後に話題作に抜擢するNETFLIX Japanのセンスのなさ

■80年代の漫画が原作という点を差し引いても到底許容できないギャグシーンの
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.0

そもそもセックスをやたらと特別視してドラマの重要なキーとして配置するその発想が古臭く退屈なので先進性の様なものは感じなかったが、それでも大半の映画のセックス場面が退屈な様にカメラの動きも劇中時間の流れ>>続きを読む

熱のあとに(2023年製作の映画)

2.5

片山慎三監督も短編映画の題材にしていた、血塗れで煙草を吸う女の姿が話題になったホスト刺傷事件をモチーフにした映画。
そもそもあの事件に映画の題材たる程の深みを感じず、凡そリアルとは程遠い「愛とは何か」
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ビヨンド・ユートピア 脱北(2023年製作の映画)

3.0

脱北を手引する牧師と彼が導くある家族、そして隠し撮りされた北朝鮮の映像が交錯するドキュメンタリー。
80年以上北朝鮮で過ごし脱北の途上にあってもまだ祖国を“地上の楽園”と信じる老婆が辿り着いた韓国で初
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国際市場で逢いましょう(2014年製作の映画)

3.0

朝鮮戦争の最中に父と妹と離れ離れになったある男の視点から20世紀の韓国史を横断していく。
韓国版『フォレスト・ガンプ』と言った趣。冒頭の蝶は明らかに『フォレスト・ガンプ』冒頭の羽オマージュだし。

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ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

元を辿れば『ブレードランナー』から『マトリックス』に至り、今日まで無数に制作されて来たオリエンタリズムSF映画の系譜。鮮烈なビジュアルとは裏腹にどこか木曜洋画劇場を眺めてる様な懐かしき場末感が漂うのは>>続きを読む

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン(2023年製作の映画)

3.2

独自の映画文法を持つ作家の長所と短所が同時に表出した印象。
歴史の暗部を暴く原作を得意の“愚男一代記”に寄せ、エンタメ性と社会派を両立させたまま3時間超を駆け抜けるのは熟練の技。しかし同時に、多少後味
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ジョン・ウィック:コンセクエンス(2023年製作の映画)

3.3

もはやアクション映画と言うより「“脚本の都合”という神の力によってどれだけ痛め付けられても死なせて貰えない男の不条理劇」と捉えた方が近いかもしれない。本作でキアヌを襲う暴力はあまりに過剰で、その臨界点>>続きを読む

禁じられた遊び(2023年製作の映画)

3.5

良くも悪くも(99%悪く作用してるが)ここ10年程の中田秀夫のフィルモグラフィは全て「“『リング』『女優霊』の中田秀夫”からの脱却」と『ザ・リング2』で衝撃を受けたという「観客が一体となり笑ったり突っ>>続きを読む

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

3.0

緻密な画作りは最早ウェス・アンダーソンのトレードマークだが、加えてこの監督は散らかり気味のシュールな脚本を書きたがる上、文字や言語にまで空白恐怖症気味に過剰な情報を詰め込むので最終的に何に注視したら良>>続きを読む

福田村事件(2023年製作の映画)

2.9

森達也監督は視点の作家だと思う。パブリックイメージの固まったものに対し他と異なるアプローチを行い最終的に予想だにしない視点を切り取る人。本作も「関東大震災後の朝鮮人虐殺の最中に日本人が誤って殺された事>>続きを読む

イノセンツ(2021年製作の映画)

4.0

本来血生臭い暴力衝動とその発露の瞬間含め人工物を中心にした画作りで無機質に淡々と描いていき、衝撃的な瞬間も殊更に強調しない。
超能力自体よりそれも含めたあらゆる暴力を内包する世界そのものが恐ろしいとい
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ミンナのウタ(2023年製作の映画)

4.0

これはメチャクチャ良い!!
超怖かったし同時に超嬉しかった。今になってまたこんな怖いJホラーが観れたことが。清水崇ルネサンスの現時点での到達点。

元を辿れば“LDH✕松竹”というHiGH&LOWと同
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エルム街の悪夢5/ザ・ドリームチャイルド(1989年製作の映画)

3.0

フレディがブラックジョーク連発するキャラになったのはこの辺からなのね。

エッシャーの騙し絵の様なクライマックスのセットを筆頭に今回は美術に気合いが入っていて素晴らしい。
このシリーズは回を追うごとに
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エルム街の悪夢4/ザ・ドリームマスター最後の反撃(1988年製作の映画)

3.0

ド頭の“a Renny Harlin film”でまず驚いた。
90年代ブロックバスター映画の王者が比較的低予算のホラーも手掛けてたのね。

この監督なのだから案の定話運びも演出も今までで一番大雑把で
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エルム街の悪夢3/惨劇の館(1987年製作の映画)

3.5

三作目は意外にも王道のジュブナイル映画になっていて楽しかった。
ギミック満載の視覚効果が多用されており目にも楽しい。この監督が後に『ブロブ』とか『マスク』撮ることになるのも納得。
邦画の学校の怪談シリ
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エルム街の悪夢2/フレディの復讐(1985年製作の映画)

2.8

2作目にしてもうつまらなくてビックリした。

美点と言うか個性的な点としてはホラーフィルムお約束のファイナルガールを排して若干線の細い青年が主人公に据えられていること。
殺される人間は全員マッチョな男
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エルム街の悪夢(1984年製作の映画)

4.0

フレディがネタ化した今観ても引き込まれるし超面白かった。
「眠る」という人間が最もリラックスして生きる為にも不可欠な行為が死に繋がる理不尽が全編良い意味でのストレスを生んでる。
夢と現実の境界が曖昧に
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COLA WARS / コカ・コーラ vs.ペプシ(2019年製作の映画)

3.3

ライバルと言うより殆ど共依存に近いコカ・コーラとペプシの80〜90年代に渡る広告戦争を当時の関係者の証言と映像資料をもとに紐解いていく。
大量消費社会と「広告」という虚業の空虚さが浮き彫りになる。と同
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バズ・ライトイヤー(2022年製作の映画)

2.0

言ってしまえば企画自体が壮大なパロディなのでどの程度真剣に画面と向き合えばいいのか終始掴みかねるのがまず大きな難点。
どれだけ劇中のバズが真剣な顔で任務に取り組んでようと、どこか半笑いでで見てしまうの
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ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(2023年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

『SING/シング』に引き続きIlluminationの映画に泣かされてしまった。このスタジオの映画スラップスティックなギャグと画面から溢れ返る情報の洪水の中心に添えられた、あまりに素朴なドラマが不意>>続きを読む

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3(2023年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

確かに終始退屈しなかった。
それだけでもここ数年のMCUの中では相対的に頭一つ抜けているとは思う。
ただやはり自分は、どうせ誰も死なない事が確定しているアクションに最後まで熱くなれなかった。
キャラク
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グリッドマン ユニバース(2023年製作の映画)

3.0

このレビューはネタバレを含みます

大好きだったTVシリーズの劇場版ということでかなり期待していたのだけど、悲しいかな終始冷めた目で見てしまった。
鑑賞から一週間、何故ハマれなかったのかをグルグルと考えたものの結局まとまらなかったので雑
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ヘルドッグス(2022年製作の映画)

3.5

先日観た『シン・仮面ライダー』とも通じる。
監督のセンスが90〜00年代初頭で止まっていて明確にダサいのだけど、監督自身はそのダサさを「カッコいい」と信じて疑わず貫いている。その結果生まれる珍妙な味わ
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西部戦線異状なし(2022年製作の映画)

3.8

「戦争を始めるのは戦場に行かなくていい人間であり、戦場で地獄を見るのは彼らに気持ちよく乗せられた人間である」という90年以上前の映画や原作小説の頃から不変の事実を、苛烈な戦場と静謐な後方の指導者達の描>>続きを読む

シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

3.5

好きです。
でも批判されても仕方ない。画面上に提示される情報を処理していけばマイナス点の方が遥かに多いからだ。

庵野秀明という人は昭和の特撮を現代に蘇らせるとき、構成を映画用に分解し再構成したりリア
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バビロン(2021年製作の映画)

4.5

全然悪くない。
確かに汚物とインモラルに塗れた映画だが、そもそもあの時代の興行の世界が品行方正な筈もなく中世だろうと戦前だろうと常に現代的な価値観と人権意識を持った登場人物たちがいてそれが是として描か
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そして僕は途方に暮れる(2022年製作の映画)

3.0

多くの人間が大なり小なり身に覚えのある怠惰や傲慢さを誇張して描き観てるこちらをチクチク攻めるのは三浦大輔作品の定石だが、流石に今回は「何で金払ってこんなヤツの話見なきゃいけないんだ」という感が勝った。>>続きを読む

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

3.0

音響に拘り抜いた無声映画といった趣。
環境音の一つひとつに意味があり饒舌にドラマを盛り上げる一方で、人物の内面が動く瞬間には台詞はほとんど使われず、俳優の身体が動き出す様とそれを的確に切り取るショット
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アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(2022年製作の映画)

4.0

「深海への信仰」「ミリオタ」というキャメロンの二つの側面が一つの映画で分裂寸前まで煮詰められた怪作。前作からジブリ風と言われていたが、美しい自然とそれを汚す人類の野蛮さを訴えながら兵器や軍隊というもの>>続きを読む

ブラックアダム(2022年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

“ヒーローではない”主人公が、その言葉通り次々人を殺して行く様を軽快な繋ぎのアクションでしっかりと見せていく。しかしその様には『デッドプール』みたいに「彼はダークヒーローでーす!」と喧伝したいスタジオ>>続きを読む

グリーン・ナイト(2021年製作の映画)

3.5

ファンタジー(幻想)に血肉を与えるのはリアリティ(現実感)であると痛感させられる。大掛かりなVFXやグリーンバック合成が無くとも、アイルランドの寒々しく雄大なロケーションを彷徨う俳優を適切に撮ればその>>続きを読む

ある男(2022年製作の映画)

4.0

石川慶の細部まで計算された硬質な画作りが醸す息苦しさと、戸籍や血縁、ヘイトといった物にアイデンティティすら否定される社会の閉塞感が完璧に嵌っていて凄く良い。在日コリアン三世である主人公に向けられる義父>>続きを読む

奈落のマイホーム(2020年製作の映画)

3.0

近年の韓国映画の「限られた予算の中でいかに画面を安っぽくせず、韓国映画特有の陰惨さを抑えたコメディタッチのジャンル映画を成立させるか」と言う試みの一つの到達点を見た気分。初登場時こそ憎々しげなアイツや>>続きを読む

すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

3.8

『君の名は。』で「あの災害をなかった事にした」こと、『天気の子』で「“世界か個人か”で陽菜を選び東京を水没させた」こと、前二作の巨大なしこりに対し明確に回答を示そうとした新海誠ディザスター三部作の最終>>続きを読む