324さんの映画レビュー・感想・評価

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夢の涯てまでも  ディレクターズカット版(1991年製作の映画)

4.2

imageの旅。パッチワーク的な諸要素の集合体を言葉で包括し、叙事詩的に物語るパワープレー。vlog的蒐集、視覚野への投映など先見的要素と、テレビ電話や音楽再生カードなどの近未来アナログツールの混成さ>>続きを読む

ガス燈(1940年製作の映画)

4.2

操作性、元祖モラハラ。灯の多寡。報復。流麗な冒頭、植樹の時間経過表現。結果そのものより手口の残忍さよ。

ジェニーの肖像(1947年製作の映画)

4.0

illusion is mine. 霊魂を注ぐ対象。人の涯てをなぞる絵筆。存在のサスペンスは早々に結論付けられ、恋愛としても霧散。キャンバス布地オーバーラップ、灯台、雷雲。

過去を逃れて(1947年製作の映画)

4.0

未来への逃亡、役割遂行の捜索。ゲーム的に交錯する思惑、裏切りの応酬。殴り合う男たちの揺れる影か重なり、見つめる元カノの顔よ。また真実を伏せられ男を待つ今カノよ。過去と現在、街と田舎の対照性。HUNTE>>続きを読む

ヨーロッパ(1991年製作の映画)

4.3

古典を踏襲した内容と形式。ほどよい形式・構造への試み。ヨーロッパ寝台特急、スクリーンプロセス、パートカラー。形式的過ぎるジャンル映画のオマージュであることを拒否するような、観客を主人公として「You」>>続きを読む

エピデミック〜伝染病(1987年製作の映画)

3.6

病める若き試み。いち映画ではなく世界の完成、あるいは未完の絶望。流布・伝播のメタファーにしては断片的すぎる、その歪さ。劇中劇、本編、そしてスクリーンの外側含めてそうですよと示さんとする「EPIDEMI>>続きを読む

エレメント・オブ・クライム(1984年製作の映画)

3.7

ミイラ取りの原理。細かい移動撮影。反復される水のイメージ。セピアルックの夢幻感。

エドワード・ヤンの恋愛時代(1994年製作の映画)

4.5

堂々と鎮座して空間に存在している人たち。そこに正しさも間違いも無く、自分の気持ちに正直か、そうでもないかの差。人と人の隙間に射す光線。広く狭い街、高所と狭所で情とペルソナに挟まれる。関係性の不適合と葛>>続きを読む

幻の湖(1982年製作の映画)

3.7

近江転生ジョン・ウィックか。圧倒的犬映画。酷いは酷いが、やりたいことは分かる。転々と置き換わる復讐。秀逸なランニングソープ嬢というキャラクターに尽きる。仏像と寝た男を比べる謎産業スパイ・アメリカ女。

エロティックな関係(1992年製作の映画)

3.7

思っていたより普通にしっかりしているお遊戯感。薄ら寒さと午後ロー的気だるさの基調音。社長室、向かい合う2人の片方のサイズだけ中途半端に違う2種類ある謎カットバック。キャラが近い内田裕也と北野武。内田裕>>続きを読む

夜空に星のあるように(1967年製作の映画)

4.0

何かに依る幸せ。安定性に欠く無自覚の指向性、うんざり人生。仕事、ジェンダー。出産後退院と出所後帰宅の対比。スポークン・タイトル風の簡潔説明。

マルリナの明日/殺人者マルリナ(2017年製作の映画)

4.0

目的的に彷徨う移動と道そのものが良い。乗合バスの駅馬車風な物語機能性。荒涼ヌケ、西部劇フォーマットにフェミニズム、田舎の保守的な男尊女卑の風土へのアンチテーゼ。強い女、弱い男の不条理。夫と子を失い一人>>続きを読む

私のプリンス・エドワード(2019年製作の映画)

3.8

ミクロとマクロのコンサバティブな水槽。またも誰とどこで生きるか問題。求めるものの得られぬ閉塞感。当然の帰結。大陸男というdis。雨、曇天の終わりと始まり。

縁路はるばる(2021年製作の映画)

3.8

オフライン(真の意味でのオンライン)の距離感。真っ直ぐプログレに誰とどう生きるか。また中国においてさらに意味を持つどこで生きるか問題。リズミカルにトライ&エラー。ジェニファー・ユーが可愛すぎる。

ローラ(1981年製作の映画)

3.8

過剰な輝度と彩度。娼館と式場の天国・地獄の両価性。

マッチ売りの少女(1928年製作の映画)

4.0

発火する夢想、幻想の原液。ミニチュア、スクリーンプロセスのギミック感が適している。

オオカミの家(2018年製作の映画)

4.3

理想郷の再構築。変容と呪縛。コロニーの外側、支配の内界。隔たりのない平面と立体。空間・部屋の壁そのものへの人物描画。相対的・流動的に動き溶け消える生物と構造物。

アラビアンナイト 三千年の願い(2022年製作の映画)

3.8

塵の堆積。埃が舞う陽光。渇望、選択。三千年前から夢の途中。瞬間の与える超越者としてでなく、理解者としての人生の帯同。

同じ下着を着るふたりの女(2021年製作の映画)

4.2

今さらどうしようもないほつれ、縁故と憎しみ。因果や宿命と呼べぬ分かち難さ。依存と生きる共同体のモチーフとしての下着が秀逸。距離が測れない拙い生き方。リコーダーの甲高い音色と保湿クリームの地獄感。

サタデー・フィクション(2019年製作の映画)

4.0

瞬間的なソフトフォーカスの夢幻感。虚な設え、大仰な構え。雨、反射。

ショーイング・アップ(2023年製作の映画)

4.0

病める境界のニュートラル。ニヒルでスレスレの毎日。解放感広がる飛び立ち。お湯、鳩、兄。

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)

4.2

ありがちな人付き合いの変化の中にある限りない痛み。ノリ、表面でなく芯にある本当のそれ。拒絶、受容、適合、喪失。

怪物(2023年製作の映画)

4.0

小説のような多視点。集合的怪物。盲目僧侶と象ではなく、逆に曖昧で視認できる怪物。好意、周縁から中心へ。そっち行っちゃうかーという、やや残念なギミック的同性愛。怪物の鳴き声のような机の引きずり音が良い。

ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)

4.2

適度な邦画らしさが溢れていて良い。だいぶ『ナイト・オン・ザ・プラネット』。時計のそれも。時間と空間の座標よ。座・高円寺でどうやって迷うん。

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)

4.4

おおよそショーシャンク好きな層に向けた映画とナメてたら違うんかい。色々と刺さる。最近仕事で疲れて読まなくなった小説をまた読もうかなと思う。萩原みのりの彼女感は天才的。

渚の果てにこの愛を(1969年製作の映画)

3.5

代替される受動の恐怖。タイトル以上のものは感じず。

刑事ジョン・ブック/目撃者(1985年製作の映画)

3.8

駅トイレ、警察署内掲示物、村への侵入の静かで雄弁な一挙手一投足のショット・編集。シンプル・イズ・ベスト。アーミッシュ。

鵞鳥湖の夜(2019年製作の映画)

4.0

水棲の魔女。汚く暗く美しい。高湿夜景。雨。妻に会うためだけにノワール。水浴嬢と水浴び鳥。

アメリカン・ストーリーズ/食事・家族・哲学(1988年製作の映画)

3.7

物語るジューイッシュ。ジングル的に差し込まれるアメリカンジョークショート。その対象が曖昧な2つから変容して、描かれる野外ディナーでのジューイッシュ同士の横の交流。開かれた野原での裸電球が照らすささやか>>続きを読む

ゴールデン・エイティーズ(1986年製作の映画)

4.0

過剰ポップ。親切心溢れる分かりやすくあっけらかんな叶わぬ恋。そんなもんだよねというドライな諦観が滲む。

一晩中(1982年製作の映画)

3.8

明度が低過ぎる熱帯夜。湿度高い。余白感を湛えた暗闇の沈黙。なんだか全シーンがグルービーなようにも、ひどく退屈にも感じる。静寂をつんざく音。暗闇だからこそ生じる機微。

故郷の便り/家からの手紙(1977年製作の映画)

4.0

眼前で現在進行形の今この瞬間、俯瞰的な長い人生。重なる過去ともっと過去と今。軋んだ走行音に掻き消される母の言葉。車上・船上での長回しの画がいい。『パーマネント・バケーション』に通ずる水上ラストショット>>続きを読む

私、オルガ・ヘプナロヴァー(2016年製作の映画)

3.8

不完全な孤独。復讐か犠牲、正義か不正義。孤独にダンスは不要。

ノベンバー(2017年製作の映画)

4.0

民話らしい物語が良い。髪の毛一本一本へのタッチがすごい。豊かなモチーフを的確にビジュアライズしていて素晴らしいです。アニミズム、オンボロ使い魔、疫病、豚、山羊、着物、ベール、水、月の光。

658km、陽子の旅(2023年製作の映画)

4.0

大文字と小文字の古傷をなぞる列島の走行。故郷へ近づくにつれて形成された人格がその故郷で過ごした幼少期へ回帰するような、あるいは純粋な幼稚性の発露。同時に生命の危機、時間と手段の制限という必要性に迫まれ>>続きを読む

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